保育園児に先越された

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「!!」 千晶の手にオレの手が触れた。 ビクリと千晶の手が強張ったが…… ……どうせ嫌がられるなら…… オレはかまわず指を絡めて恋人がするように手を繋いだ。 ピタッと千晶の足が止まってしまう。 『やめて』なんて言いながら、振り払われるのを覚悟するが…… そんな様子もなく、オレには千晶が戸惑っているように見える。 少なくとも、戸惑っているが、嫌がっている様子はない。 ……もう少し側に寄っても大丈夫か? 行動を起こすかどうか考え、すぐさま結論は出た。 できることをせずに後悔するより、どうせなら、してから後悔なり反省なりすればいい。 「千晶の近くに寄るから、こっち見ずに進んで。」 「!?」 予告をしておけば、身構えることもできるはず。 息を呑んだ千晶の側へ…… 繋いだ手の腕が触れ合うところまでオレは距離を詰めた。 ……やはり千晶からは戸惑っている気配しか感じない。 嫌がられていない。 その事実だけでオレは満足だ。 これから時間をかけて、距離を縮めて親密になっていければいい。 「行こうか」 くっと繋いだ手に力を込め告げると、こくりと頷き、手は繋いだまま歩き始める千晶。 少し千晶の顔が赤く見えるのは光の加減か? 千晶の手をしっかり繋ぎ、特に言葉を交わすことなく歩くことニ、三十メートル。 「みぃちゃん、だいすき!」 「みぃもたっくん、だいすき!」 ……あの子たちのように素直に伝えれば、千晶は応えてくれるだろうか? 繋いだ手からと、歩くたびに触れる腕から伝わってくる体温に、オレは愛おしさを感じながら、車へと足を進めていった。
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