好き。側にいてほしい。

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好き。側にいてほしい。

科学博物館からの帰り道。 隆とみぃちゃんはチャイルドシートに座ったまま、仲良く夢の世界へ。 ……ずっとはしゃいでいたもんな。 千晶もうたた寝くらいするのかもと思っていたが、ぼんやりと自分の手元を見ていたり、窓の外を見ていたり。 千晶も疲れているのだろうか? 「……千晶はこの後、帰ったら家でゆっくりするの?」 帰るまでのわずかな時間、千晶と話をしていたい。 ……正直、もう少し一緒にいたいと思うが、今日は苦手なはずなのに、見上げて目を合わせてくれて、手も握ってくれたんだ。 これ以上望んだら罰が当たる。 せめて、帰ってからの予定を聞き出して、差し支えないようなら電話で話をする約束をしておきたい。 千晶はオレの方を見ないように頷きながら「特に用事もないから、家で本を読もうかなって……。」と、 特にこれといった予定がないことを教えてくれる。 そして、物憂げに小さくため息をついた。 ……そのため息はなんだ? オレと話すのが嫌という感じは受けない。 ……もしや、帰りたくない……のか? オレの都合のいいように解釈してもいいのか? ……もし…、もしそうならば、この後、一緒にいたいと誘っても…… 「なあ、千晶……」 そう考えてしまったのと、口が言葉を紡いだのはほぼ同時だったと思う。 「はい?」 「用事、特にないなら、子供たち送った後、二人でカラオケ行かない?」 「………はい?」 「カラオケ苦手なら、映画でも食事でもウィンドウショッピングでもいい。………君ともう少し一緒にいたいんだ。」 そして、心からの願いもするりと口をついて出てしまった。
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