強引でも連絡先を

2/4
前へ
/77ページ
次へ
そして、ニコリと微笑んでくれるが…… 営業で様々な人と話をするせいか、すぐ分かってしまった。 ……無理して笑ってる…… 痛々しいその笑み。 ……心にズキッと痛みが走った。 ……オレと話したくないのか? 彼女の様子から、そんなことを考えてしまう。 ……凹むのはまだ早い。 もう少し話をして、関わりをもたないと。 「みぃちゃんのお母さん、お名前は?オレは野村和也といいます。」 まずは自己紹介。 自分から名乗れば、その流れで彼女も名前を言ってくれるだろう。 「……伊藤……、伊藤千晶(ちあき)……です…。あと、……お母さんじゃなくて……叔母になります。」 たどたどしい話し方が気になってしまうが…… 伊藤千晶…… 彼女の名前ゲット。 千晶か。 かわいい名前だな。 それに、母親じゃなくて叔母か。 ひとまず既婚者を奪うっていう略奪の選択肢は選ばなくても良さそうだ。 「みぃちゃん姪っ子になるんですね。オレと同じだ。隆は兄貴の子供で甥っ子なんだ。」 なんとなく甥っ子、姪っ子を迎えに来ている者同志なんていう親近感がわいてくる。 「先生に聞きました。いつも隆の迎えが来るまで待ってくれていたんですよね?」 オレの質問に「ええ……、まぁ……」なんておずおずと頷く千晶。 ……なんだ? 全く目が合わない。 ……緊張してるのか? それとも、オレ、何か気になるようなこと言ったか? ……心当たりは全く無い。 オレはかまわず会話を続けることにした。 「そんなこととは知らず、御礼の一言も言わず、今まで申し訳ありません。」 今日知ったこと……なんて言い訳はしない。
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

351人が本棚に入れています
本棚に追加