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五章 シフォンケーキの味は
後日、神名君経由で『時雨心霊相談所』からの請求書が渡された。記載された金額を見て、私は目を剥いた。
請求書を握りしめ、
「ねえ、神名君、これ、ふっかけてない……?」
手を震わせていると、
「大丈夫だって。お友達価格にする約束じゃん。遥臣さんも、この通りに払えとは言わないよ」
神名君は明るい声で笑い飛ばした。
「でも、あの人、感情ないんだよね? 血も涙もないんだよね?」
「あんまり遥臣さんを嫌わないであげてよ」
苦笑した神名君に、
「嫌ってるわけじゃないけど……」
と、溜め息をつく。
「あの人、つかみ所がなくって」
「悪い人じゃないんだよ。――そうだ、木崎さん。明日、一緒に事務所に行こうよ。午後の授業も、休講になっていたしさ。それに、シフォンケーキを焼いてくれる約束だっただろ?」
神名君に誘われ、私は「そういえば、そんな約束をしていたな」と思い出した。断ることもできず、
「うん、分かった」
と、了承した。
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