五章 シフォンケーキの味は

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 あまりにも気持ち良さそうなので、このまま、寝かせておいてあげてもいいんじゃないか……などと思っていたら、神名君は容赦がなかった。 「遥臣さん、起きて。風邪引きますよ。寝るなら、布団で寝て下さい」  ぺちぺちと額を叩かれ、時雨さんが「うーん」と声を上げる。長いまつげが揺れて目が開くと、うつろな視線が、私と神名君を捕らえた。 「……何してるん、君たち……」 「遥臣さんの様子を見に来たんですよ。それと、彼女がシフォンケーキを作ってくれるそうです」  神名君に話をふられて、 「あっ、はい。そのつもりで」  と、慌てて頷く。 「シフォンケーキ……?」 「心霊相談の相談料の代わりに、木崎さんにケーキを焼いてもらう約束だったじゃないですか」 「そういや、そんな話もしてたかなぁ……?」  時雨さんは、のっそりと身を起こすと、目をこすった。ふわぁとあくびをする。だらしない仕草なのに、それがいちいち絵になるから、美形はずるい。 「ほな、楽しみにしてるわ。ケーキ」  全く楽しみにしていないような顔で言われ、私は「絶対おいしく作ってやる」と心に決めた。
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