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あまりにも気持ち良さそうなので、このまま、寝かせておいてあげてもいいんじゃないか……などと思っていたら、神名君は容赦がなかった。
「遥臣さん、起きて。風邪引きますよ。寝るなら、布団で寝て下さい」
ぺちぺちと額を叩かれ、時雨さんが「うーん」と声を上げる。長いまつげが揺れて目が開くと、うつろな視線が、私と神名君を捕らえた。
「……何してるん、君たち……」
「遥臣さんの様子を見に来たんですよ。それと、彼女がシフォンケーキを作ってくれるそうです」
神名君に話をふられて、
「あっ、はい。そのつもりで」
と、慌てて頷く。
「シフォンケーキ……?」
「心霊相談の相談料の代わりに、木崎さんにケーキを焼いてもらう約束だったじゃないですか」
「そういや、そんな話もしてたかなぁ……?」
時雨さんは、のっそりと身を起こすと、目をこすった。ふわぁとあくびをする。だらしない仕草なのに、それがいちいち絵になるから、美形はずるい。
「ほな、楽しみにしてるわ。ケーキ」
全く楽しみにしていないような顔で言われ、私は「絶対おいしく作ってやる」と心に決めた。
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