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一章 セーラー服の幽霊
セーラー服を着た少女が泣いている。
手の甲で溢れる涙を押さえながら、しきりに何かつぶやいている。
何? 何を訴えているの?
私は耳を澄ましたが、あまりにもか細い声なので、聞き取ることはできなかった。
毎日、毎日、どうしてあなたは私の前に現れるの。
「――さん」
うるさいな。私はあの子のせいで眠たくって……。
「木崎さん。起きたほうがいいよ」
ゆさゆさと肩を揺さぶられ、私――木崎咲那は目を覚ました。腕を机の上に置き、突っ伏して眠っていた私は、
「えっ……と……?」
一瞬、自分がどこにいるのか分からず、顔を上げてぼんやりとした。
「あはは、ようやく起きた。おはよう、木崎さん」
名前を呼ばれて振り向くと、大学の同級生、神名圭が笑っていた。
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