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ステータスボード
僕は、まさかと思いながら、お手伝いさんに聞いてみる。
「あの、ここは僕とリュウ、どっちの部屋ですか?」
「村長からは、お部屋は一つと伺っております」
「いや、でも他にも部屋は沢山ありますよね?」
「はぁ・・・・・・」
部屋にベッドは、一つしかない。夕飯では、あんなに歓待を受けていたのに、まさかの一部屋しか用意されていなかったとは・・・・・・何かの間違いだろうか?
「しかし、村長からは部屋は一部屋でよいと聞いておりまして・・・・・・」
お手伝いさんに『何を言っているんだろう』という顔をされ、ガンとして受け入れてもらえなかった。
『この人は、仕事をやる気がないのだろうか』そう思っていると、リュウに腕を引っ張られた。振り返ると、リュウが僕の袖を掴んでいる。
「レイ、俺は一緒でもいいよ」
リュウの笑った、優しげな瞳を見ていたら、そんな事はどうでも良くなってしまった。君は天使か?!
「すみません、大丈夫です」
お手伝いさんにそう伝えると、彼はお辞儀をしてドアを閉めて去っていった。
僕はソファーに座ると、ため息をついた。
「リュウ、僕はソファで寝るからリュウはベッドを使ってくれ」
「レイ、なに言ってるんの?俺が同じ部屋でいいって言ったんだから、俺がソファで寝るよ」
「いや、リュウをソファになんて寝かせられないよ」
「先輩は、ベッドを使うべきです。このソファーは硬すぎるよ」
リュウは、僕の隣に座って座面のクッション部分を押しながら言った。
「リュウは僕より少し背が高いから、ソファーに寝たら足とか絶対はみ出すって」
しばらくの押し問答の結果、結局二人でベッドに寝る事になった。ダブルベッドだったため、二人で寝ても充分な広さである。
「それにしても、ステータスボード消えないな・・・・・・」
「うん。スワイプして開いたから、画面を2回叩くと消えたりしないかな。機種にもよるけど、スマホだとそうだったりするよね」
試しに画面を2回叩いてみると、今まで閉じれなかったのが嘘みたいにあっけなく画面が閉じられた。
「え、なに?レイ凄い。画面を2回叩くの?」
そう言いながらリュウは、画面を軽く2回叩いて画面を消していた。
僕達は、しばらく画面を出したりしまったりしながら、魔物の討伐について何か手掛かりはないかと画面を見ていた。
「リュウ・・・・・・リュウは『グラクエ』をやっていたんだろう?何と言うか・・・・・・やり方とか、何か知ってる事はない?」
「ええと、グラクエについては、ごめん。俺も小学生の時にやったきりで、あまり覚えていないんだ。ただ、『はじまりの村』には村長しかいなかったと思うし、お手伝いさんなんて人もいなかったと思うから、ゲームとは全く同じではないのかもしれない」
リュウは困った様に眉尻を下げていた。知らないというのなら、仕方がない。僕なんて、ほとんどやったことがなかったから、ここが『はじまりの村』だって事にすら気がつかなかったんだから。
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