173人が本棚に入れています
本棚に追加
/56ページ
明朝
次の日の朝になって、目が覚めると見たことのない部屋にいると思った。ここは・・・・・・ああ、そうだった。僕は、何だかよく分からない世界に来て、よく分からない村長の家にいるんだった。
頭が少しハッキリしてきて、手に何か柔らかいものが触れていることに気がついた。
よく見れば、俺の手はリュウの腹の上辺りにあった。リュウは、寝相が悪かったのか身体をくの字に曲げて、寝間着用に着ていたTシャツの前が、はだけていた。
そこまでは別に良かったのだが、俺の手は何故かリュウの腹の上にあった。寝相が悪かったのか、リュウのTシャツは捲り上げられており、素肌の上に乗っていた。
「え?」
驚いた俺は慌てて手を引っ込めた。引っ込めたのは良かったものの、リュウの腹を引っ掻いてしまう。
「いたっ・・・・・・」
リュウは、起きると何が起きたのかと身体を起こした。辺りをキョロキョロと見回して何もないことが分かると、寝惚け眼でこちらを見ていた。
「レイ、おはよう。どうしたの?」
「ごめんリュウ。寝惚けてリュウのお腹引っ掻いちゃったよ」
よく分かっていないリュウは、首をかしげると自分の腹を見た。ミミズばりになって少し血がでている。
「あー・・・・・・大丈夫。なめときゃそのうち治るよ」
「ふふっ、舐められるの?」
からかうように俺が言うと、リュウは自分の腹を見てから、俺の顔を見た。
「もう・・・・・・いいよ」
リュウの頬をふくらませて怒っていた。シャツをそのまま戻そうとするので、リュウの手首を掴んで引っ張った。血がシャツについてしまう―――そう思ったら、ほとんど無意識のうちにリュウのお腹を撫でていた。
「ふゃっ・・・・・・」
自分の行動に自分で驚いて、そのままの体勢でリュウの顔を見上げると、リュウは顔を真っ赤にして口に手を当てていた。俺の肩口を必死に押している。
「ほとんど血出てないし、ホント、大丈夫だから」
俺がそう言うと、リュウはそのまま掛け布団に包まって、もう一度寝てしまった。
「まだ朝早いし、もう一度寝るから!!」
「うん。起こしてごめんね。おやすみ」
僕はリュウの頭をそっと撫でると、部屋を出てリビングへと向かった。
最初のコメントを投稿しよう!