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何年も学校の裏山で遊んできた僕達だったからこそ驚いた。その祠、が何故今まで見つからなかったのだろうということに。
祠は、注連縄が巻かれた木の根元にちょこんと存在していた。いつも登る山道をちょっとだけ逸れた場所。どうして今まで気づかなかったのだろう。茶色の屋根はあちこち緑色に苔むしていたし、注連縄は汚れていて結構汚かった。祠の中には小さな扉のようなものがあり、ボロボロの南京錠のようなものがかかっていたような気がする。
『きったねー!』
ケンちゃんがそう笑いながら南京錠をつっつくと、錆びだらけの南京錠はあっさり壊れてぽとっと落ちてしまった。僕はちょっとだけ嫌な予感がしたけど、ケンちゃんは平気な顔して奥の小さな扉を開けてしまう。
ちなみに、祠のサイズは僕達の体の半分くらいしかない。奥の扉のサイズも小さいので、頭を突っ込むこともできない大きさだと言っておく。ケンちゃんは中をまじまじと覗きこむと、再び“ばっちいな!”と罰当たりなことを言って扉を閉めたのだった。
『なんか面白いものでもあった?』
僕が尋ねると、彼は肩を竦めて、“へんなのが”と答えた。
『なんか、超小さい座布団?みたいなのが見えたけどそれだけ。ばっちいから触らなかった!』
『や、触らない方がいいって。ああいうのって、さすがに触ったら祟られるって』
『なんだよ、たっちゃんびびりだな!!』
そうだ、思い出した。
ケラケラ笑うケンちゃんと一緒に、僕はそのまま家に帰ったのだ。で、普段ならお腹をすかせながらテレビでも見て(宿題なんかやるはずもない)お母さんの帰りを待ってるところ、急に眠くなって――そこから先の記憶がないのである。
「……知らなかったのね。あんた達が開けたの、“おかごさま”の祠よ」
お母さんはため息をつきながら話した。
「この町じゃ結構有名。あの裏山に、ごくごく稀に出現するんですって。おかごさま、っていう良くわからない神様?あやかし?とにかくそういうものの神様の祠が」
「……もしかして、開けたら駄目だったの?」
「近づくだけでも危ないのに、鍵壊して扉まで開けるなんて完全にアウトよ。本当に良かった、あんただけでも眼が醒めて。連絡があったけど、ケンちゃんはまだ眠ったままらしいの」
「え」
血の気が引く僕。どうやら想像以上に、危ないことをしてしまっていたらしい。
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