孤高のスター

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瞬きをした瞬間、ウルフが倒れこんでいた。 ―何が起こったんでしょうか。マークリーの勝利です。 「手加減していたな」 「パフォーマンスだからな」 歓声を背にマークリーは次の挑戦者を待っていた。 ―続いての挑戦者はエントリーナンバー9、トルエン・エース。 覆面の男が前に出た。 「僕とカードゲームをしてくれ」 マークリーはカジノテーブルに腰かけた。 「ブラックジャック。ルールはわかるね?」 「勿論」 俺の横にいたワニが言った。 「マークリーはブラックジャックでも既に253人の挑戦者に勝ってる。無謀だな」 マークリーは二枚カードを受け取った。 「勝負は三回。二勝した方が勝ち。 一つの試合が引き分けの場合は4回戦まで延長。 どちらがオートライフのキングか決めようじゃないか。」 トルエンはクイーンと8が出た。 「ステイで」 トルエンはカードを手放した。 マークリーは10と6だ。 マークリーは一枚引いた。7が出た。 「バーストで負けですね。第二試合」 手に汗を握る。 マークリーはクイーンと8。 俺はガッツポーズをとった。 トルエンは10と6だった。一枚引き9が出た。 会場がどよめいた。 ―マークリーとトルエン共に同点です。次の勝負で決まります。 トルエンは6と4が出た。 マークリーは10と10が出た。 「君からでいいよ」 するとトルエンは一枚引き、マークリーも一枚引いた。 どうして一枚引いてしまったんだ。 そのままにしておいた方がほぼ確実に勝利だったのに。トルエンのバーストか点数負けが期待できた。 これはかなり勝率が低い。 会場上部にはマークリーへの批判のコメントが一斉に流れた。 「最後は一緒に開きましょうか」 トルエンはJが出た。これで勝算は消えた。 頭を抱える暇もなくマークリーの手札が裏返された。マークリーはAだった。 ―なんと、ブラックジャックでマークリーの勝利です。なんてことでしょう。奇跡的な勝利を納めました。一対二でシトリン・マークリーの勝ちです。 会場が一斉に沸いた。 「僕が負けるわけないのに」 トルエンが膝をつき崩れ落ちた。 マークリーは彼の前に立った。 「一回目は5.6.7.8ならセーフで僕が勝てる。 しかし、僕が1~4,9~13ならほぼ確実に負け。 君は何も引かなくても勝てる。 僕は引かなくてそのままじゃ確実に負け。 だから、一枚は引かざるをえない。どう見ても僕が不利だ」 マークリーは山札をぶちまけた。 「君は勝負に値しない。君の手口は見えていたよ。 配られるカードは必ず偶数なのに札の山から取ると必ず奇数が出ることに気がついた。 それも一定の法則に基づいて。 7.9.J.Aの順番だった。君はまず10として加算されるJQKのカードのうち奇数のJKを一枚にするために、それだけでなく自分が真のキングになりたいがためにKは抜いていた」 「たった三回の勝負でそこまで分かるのか」 「賭けるしかないさ。それは僕の直感で」 マークリーは手札を観客席に投げた。 「僕は二回戦目と同じで次の札を引かずにステイにするように仕向けられていた。 そうすれば必ず勝てると思い込まされたからね。 君はJを引いても引き分け、11にもなれるAを引いて勝利のどちらかになっていた。 だけれど、僕は君の一手先を見ていたんだよ。 あと二回先でAが出ることが見えたのさ。 僕に20が出るなんて誤算だったね」 トルエンは悔しそうに会場を出ていった。
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