孤高のスター

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それから何人も彼に挑んだが歯が立たない。 ―続いての挑戦者はエントリーナンバー25、マスター・レイ。 俺は口から心臓が飛び出そうになりながら、真ん中のステージに上がる。 「君は?」 「マスター・レイ」 「もしかして新人?」 「なわけないし」 彼が見上げると頭の上にレベルが表示された。 俺はまだたったの15Lvで体力値などの様々な価が低い。 「やっぱり」 「勝手に見るなよ」 周りから笑い声が聞こえてくる。 確かにどいつも50は超えている。 平均が100だから俺は勝負にならないかもしれない。 「俺と勝負をしてくれ」 「無理だよ、絶対に僕には勝てない」 体力と頭脳はマークリーには勝てない。 ずるをしても見破られてしまう。 でも、俺は一つだけ勝てる気がしていた。 「マークリー、君自身のクイズをしよう。正答率が高い方が勝ちだ」 ―おおっと、これは前代未聞だ。 マークリーについてのクイズのようですね。 「クイズは運営が考えてくれて構わない。俺は君に勝てる自信がある」 「僕も僕自身のことだから分からないわけないよ」 ―なるほど。それではそれぞれ手元のタブレットに記入し、一斉に回答を見るという流れでいきましょう。 それでは始めます。 俺はマークリーの出ているあらゆる雑誌やテレビは全て記憶している。 そしてマークリー自身さえ知らないことも。 ―第一問。マークリーが初めてイメージキャラクターを務めたものとは。 二人とも清涼飲料水と答えを書いていた。 ―正解。マークリーがメインキャラクターで製作されたゲームは『ミッション』でしたが、その記念に発売されたものとは。 目覚まし時計。 ―今のコスチュームは何代目か、また二代前は何色だったか。 四代目、二代目は黄色。 ―マークリーの所属するチームは何人で構成されているか。初期メンバーはそのうち誰か。 五人。チップとサッチャーが初期メンバー。 ―マークリーの座右の銘は 「見方さえも裏切るしたたかさを持ち、常に心を強くあれ」 ―今までのは楽勝でしたね。マークリーファンであれば誰でもしっています。 続いてマークリーは焦るとある癖が出ます。 俺は「鼻をかく」マークリーは「目が泳ぐ」と回答。 ―さぁ、これは。鼻をかくでした。マスターレイがリードしている。 マークリーには憧れの人がいます。 「オッドアイ」 このゲームの創始者であり、プレイヤーだ。 ―マークリー三連覇記念にオートライフで期間限定で購入出来たものと、無料配布していたものがありました。なんでしょう? 「購入出来たのがマークリーモデルのスナイパーライフル、無料配布はマークリーモデルのバンダナ」 ―マークリー特集の雑誌でマークリーと対談していたのは、モルトでしたがおまけでマークリーについて語っていたのは? 「キルア・バースト」 ―おっと、マークリーの手が止まった。無回答です。 マークリーが悔しそうに下を向いた。 「自分の出てる雑誌なんか読まないし」 ―それでは、最後の問題。 マークリーも出場したバーチャルサバイバルゲーム大会で参加者募集ポスターに写るマークリーの衣装は何色で、何をコンセプトにしたものでしょう。 「スポンサーからでそれは僕も聞いていない」 「緑でスネーク」 マークリーが顔を上げて俺を見た。 ―正解 「俺はマークリーのファンだから」 緑は覚えていたが、マークリー自身も知らないことはきっと制作側が言っていないからファンも知ってるわけがないのだ。 座右の銘のしたたかにから思い付いた。 ―勝者はマスター・レイです。誰がこれを予想できたでしょうか。 彼にはマークリーがリーダーであるフィートに入団出来る権利を与えられました。 大きな歓声に包まれた。 「レイおめでとう」 観客席から声がする。 すると、目の前に熊のぬいぐるみのホログラムが現れた。 「レイ、すごいな」 この熊はクラスメートの尾崎だ。 俺は友人の尾崎にだけプレイヤー名を教えている。 彼がサバゲーのときにふわふわした短い手足で銃をうつ姿は中々に面白い。 「ジン、お前はでなかったのか」 「マークリーに勝てるわけないからエントリーすらしなかったよ」 「くれぐれも他の人には内緒だからな」 「わかってるよ。明日学校で」 尾崎のアバターは消えた。 近づいてきたマークリーは俺に何かを手渡した。 「これ連絡先。僕に用があれば通信して」 オートライフの全プレイヤーはそれぞれidを持っていて、それを知っている人同士が個別に連絡をとることが出来る。 「やったな」 気がつくとさっきのおじさんが隣にいた。 「憧れのマークリーと一緒に試合に出れるんだぞ」 「なんか嬉しいけど、凄い緊張した」 都市の中心の時計を見ると六時をまわっていた。 「そろそろ帰らないと、明日学校だし」 俺は入り口に戻り公園の外に出た。 次の日、学校に行くとすぐにネットニュースになっていた。 『新人プレイヤーマスター・レイ勝利』 教室はその話で持ちきりだった。 「すごいよなーマークリーに問題で挑んだんだ」 「レベルでいうとマークリーが523だから本当に糞なのにな」 俺は少しへこみながらも耳をそばだてていた。
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