孤高のスター

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「おっはー」 肩を掴まれ反射的に体がはねる。 「なんだよ仁かよ。びっくりした」 「凄い盛況ぶりだな」 なるべく反応しないように真顔で頷く。 クラスでは中原さんもお互いに目立たない方。 「中原さんにアピールしてこいよ」 「無理」 教室の隅の席に居る中原さん。物静かで凛とした美しさがある。 物腰は穏やかだけど皆と関わろうとしない。 「これ、日直はノート配らないとだろ」 俺は仁に渡されたノートの山を抱えて、各席に置いていく。 中原さんの前に行くと彼女が顔を上げる。 「あ、これ。ノート」 彼女がマークリーモデルの時計をつけていることに気がついた。 「ありがとう」 よく見ると持ち物もマークリーの色だった。 「あのさ」 緊張でうまく声がでない。 「マークリー好き?」 彼女は一瞬考え込んだ。 もしかして、聞いたらいけなかったか。 「好き」 そのワードを待っていた俺は一気に体温が上昇した。 「俺もマークリーのファンで。めっちゃ好きなんだ。 この試合も見に行った。 その時計のモデルが違うもの持ってる」 「そうなんだ。マークリーってファンもいるけど、その分アンチもいるよね」 あれ、彼女の反応が悪い。 「それは、マークリーのことを羨ましがってるだけだよ。みんな強くって格好いい無敗のヒーローに嫉妬してるんだ」 「そっか、よかった」 彼女は微笑んだ。心臓が破裂しそうだ。 「よかったら、またマークリーの話しよう」 「もちろん」 彼女の方から願ってもいない申し出がありテンションが上がる。 この後、仁に散々からかわれたが結局誰にも言わなかった。
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