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トーストを片手にテレビを見る。
「連日悪夢を見たと言っていた人達が昏睡状態になっています」
なんだそりゃ。
「悠一あなたも気を付けなさいよ」
「どうやって気を付けるんだよ」
お母さんはオートライフの機器を指差す。
「ゲームの中で死んでも関係ないよ」
「違うわよ、ゲームのし過ぎで勉強してないんじゃないの」
「してるって大丈夫だよ」
そろそろ出ないと。
「行ってきます」
マップを頼りにある建物にたどり着いた。
シンプルだけど壁にかかっているのは課金勢でもここまでは出せない巨額の物ばかりだ。
一つくらいはいつか欲しいと思う。
「お邪魔します」
扉を開くとサッチャーの面々がそれぞれに何かをしていた。緊張で汗が止まらない。
一番近くにいたチップがマークリーを指差した。
マークリーは背を向けて武器の手入れをしていた。
「あの、こんにちは」
振り返ったマークリーは一瞬目を見開いた。
「あぁ、あのときの。マスター」
「レイです。レイでいいです」
雑誌やオートライフの観客席でしか見たことない憧れの五人がここにいる。
「レイ、宜しく。好きなとこに座っていいよ」
近くのソファに腰かけた。
「僕がリーダーであるサッチャーにようこそ。
僕がこの組織を立ち上げた理由などは君なら知っているね?」
「はい。eスポーツが全てオートライフに代わり、オートライフの中で言語や身体・場所の制限の壁を越えた交流を行えるようになった今、全世界のユーザーとさらに幅広い交流を進める代表になるでしたね。あらゆるゲームを行い、楽しみや悔しさを分かち合いたい」
他の四人のメンバーも手を止めてこちらを見た。
「模範解答をありがとう。一時期入団テストをしていたがここまで正確な解答はなかったね」
彼はケーキを購入し、僕に手渡した。
オートライフでは購入した物を家に送ってくれるサービスがある。
「歓迎するよ」
「ありがとうございます」
「オートライフでは基本的に自分の個人情報は教えないことになっているが、僕は18だから君より下かもしれないね。敬語でなくていいよ」
「18?俺と同じ歳だ」
「本当に?それなら良かった。
さて、本題に入ることにする。
サッチャーも基本的にはオートライフの規約と同じであくまで現実の世界とは切り離して、現実世界では会わないようにということにしている。
だから、僕はサッチャーのメンバーの性別年齢住所は知らない」
「なるほど」
やっぱりそうか。
「お互いに詮索しないということになっている。
それと、僕達の隠れた役割がある。
オッドアイが僕達にお願いをしてきたんだ。」
彼は手にサバゲー用とは異なる銃を持っていた。
「それは」
「オートライフにはシステムバグが発生する。
精神と肉体と密接に関係する故、プレイヤーが影響される。そのバグを取り除く」
「なるほど。それは知らなかったです」
「それを逆手に取って悪事を働くものがいる。
そいつらを取り締まりアカウント凍結に結びつける。
新人を入れたのはもう1つ理由があって、人手がたりないんだ。それに」
彼は真剣な顔をしていた。
「運命の日がくる」
「運命の日?」
「そう。裏で大きな力が動いている。
運命の日はもうすぐ。
すべてのオートライフの機能が意図的なバグによって機能停止、何者かによって連動している全世界のプレイヤーやインターネットに影響が出る」
「具体的にどんな影響が?」
彼は俺の顔をじっと見る。
「連日ニュースでやっている悪夢を見た人たちが昏睡状態に陥っているだろう。もう既に運命の日に向かって着々と進んでいる」
「その運命の日とやらに向けてこちらも強化すると言うことですね」
マークリーは頷いた。
「オッドアイは僕達をドリーム・キャッチャーと呼んでいる。一緒に世界を救ってくれ」
「急に言われても」
俺が引くとマークリーは困惑していた。
「喜んで入るもんだと思っていた。ゲームのチームだけじゃない。ドリームキャッチャーは大事な仕事だ。君が入らないのなら別の人に頼むよ」
キルアがタブレットを持ってきた。
「モリートシティの掲示板に洗脳の暗号が隠されていた。これを実際に見たアカウントのプレイヤー達がダイブされている」
「ダイブ?」
キルアを見上げると、彼は目を細める。
「夢の中に入られてしまうこと」
「それはまずいですね」
「まずいどころではない。ここにいる全員が既に見ているんだから」
俺たちもいつダイブされるかわからない。
「さぁどうする。遊びじゃないぞ」
マークリーに見つめられて息が止まる。
「俺もやります」
こうして、ドリームキャッチャーに加わり夢との攻防が始まる。
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