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爆風でお花畑の一部が燃えている。
奥に大きな屋敷があったが、壁に大きな穴があり崩壊寸前だ。床に穴が空いていた。
「渋谷のスクランブルで爆発がおきた。
郊外の森山邸が一部崩壊。
下手に攻撃するなよ。リンクしてしまったかもしれない。外せば被害が拡大する」
テディベアの手にはロケットランチャーが握られていた。
「容赦ない。やばいぞ。あれが当たったらひとたまりもない」
俺は全速力で逃げた。
目の前に壁が現れ後ろから鉄球が転がってきた。
マスターキーで足元を高くし上から見下ろす形になる。
大きな腕が伸びてきて俺を両手で潰そうとする。
マークリーのIPコアはこの夢のどこかにある。
俺が先かこいつが先に見つけるか。
テディベアの口から声が漏れた。
「制御できない」
俺が大砲をテディベアに向けると大きな壁が現れ、黒い霧で覆われた。
そもそもダイブとはいわゆるバグやコンピューターウイルスのようなもので誰かが意図的に開発して潜り込ませた先で操作している。
「マークリーなのか」
「逃げろ。僕に構うな」
意識が朦朧としてきて、膝をついた。
「霧を吸うなよ」
チップに言われて急いで鼻と口を塞ぎ、ガスマスクを出した。
立ち上がり黒い霧の中を進むと周りを火で囲まれていることに気がついた。
催眠ガスに火で逃げ道を塞ごうって訳か。
テディベアが炎の向こうで立っていた。
熱風が強く吹いている。
マスターキーで大雨を降らし、火を消したと同時にテディベアに近づいた。
テディベアが手を上に上げると、足元の砂が俺を中心に円を描いて落ちていく。蟻地獄だ。
砂吹雪で前が見えない。
さっき降らせた雨のせいでさらに地盤が緩んでいる。
俺の足はズブズブと砂の中に吸い込まれていく。
テディベアに近づくとテディベアの足も取られて一緒に沈んでいく。
俺の腰の辺りまで砂に埋まってしまった。
空を見上げると大きなぬいぐるみが降ってきていた。
「君の悪夢はまるで」
テディベアはそのままもがいているが首まで埋まってしまった。
マスターキーでシャベルを出し俺とテディベアごと
すくいあげた。
空からキラキラした雪が降ってきたことに気がついた。
テディベアはシャベルから飛び降りると走って、噴水に向かった。
噴水の中には大きなルビーのような宝石を見つけた。
奴はライフルを宝石に向けた。
俺は大声で叫んだ。
「やめろ」
爆音がしてパリンと音がした。
あれはIPコアだろう。自分で傷つけて周りの部分を壊し、中のコアを取り出すつもりだ。
コアは本人のあらゆるアカウント情報がデータとして記録されている。
コアにヒビが入っている。
中にいるマークリーがいま確かにしまった、と呟いた。
あと一発でも入れば確実に破壊される。
俺はテディベアに向かって全力で衝突し、共々噴水に落ちた。
俺はテディベアをライフルごと抱き締めた。
これで発砲できなくなり、動くことすら難しいだろう。
噴水は足首くらいの深さだと思っていたが予想と違い、マークリーの意識下にあるためか海の底のように静かで深い。
俺たちはそのままゆっくりと下に向かってどんどん落ちていた。
不思議と息はできるし寒くなくて心地よい。
「レイ」
声に目を開けるとテディベアの口が動いていた。
「マークリー大丈夫か」
「あぁ、君こそ。
レイ、僕なんかを助けに来てくれたのか」
「そうだ。ここまで散々だったよ」
彼は笑ったように思えた。
俺が見回すと彼はゆっくりと話を始めた。
「ここは通常コアの近くに存在する心海だ。僕でも見るのは初めてだ」
「ここからどうなるんだ」
「このまま無限に落ちていく」
サッチャーが無線から呼び掛けていた。
「おい、GPSの制御が出来なくなった。いま、どこにいる」
「あぁ、サッチャー。心海だよ」
本人の心理状態が反映されるといつか聞いたことがある。
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