君と紡いだ物語

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「一週間だけ一緒に居させて下さい!」 栗色の髪を耳上で2つに束ねた、ツインテール。むきたての卵みたいな滑らかな白い頬。 一目見て、白うさぎを連想させた。 そして、濃紺のセーラー服と茜色のリボン。 短めのプリーツスカートから覗くカモシカの様な白足。 どっから見ても女子高生な彼女は、文庫本をレジに差し出しながらそう呟いたのだ。 「……え?」 「だ、か、ら、行く所ないんです!」 「は?」 まさか、家出? 「あなたの家に居候させて下さい!」 「はぁ?!」 しまった。大きい声を出してしまった。お客様にジロジロ見られてしまう。 僕は小説家を目指しながら、本屋さんで働いている。新刊が出る度に試し読みしたり、時には購入したりと色々と勉強をしている。昔から本を読むのが好きな僕にとって、本に囲まれて働けるこの場所は天国の様だ。  そんな事より、今の状況が飲み込めない。 「あの、後ろにお客様もいるので……」 小さめの声で彼女に向けて言う。 「じゃあ、いいんですか?」 「あの、とりあえず、買った本を持って……」 「いいんですね?やったーー!!」 彼女は喜びのあまり飛び跳ねる。うさぎみたいなツインテールが揺れる。 喜びながらレジ横にズレた彼女に、イライラしながら次のお客様の会計をした。 何度か会計をしている内に、彼女の気配が消えた気がしたので「何だ、冗談だったのか……良かった」と安心し、本の整理に出かけた。 逆ナンパか何かだったのか。 そんな事を思いながら、本の整理をしていると後ろから足カックンをされ、倒れそうになる。 おっと、危ない! 勢いよく振り返ると、さっきの女子高生がにまり、と笑って立っていた。 胸にはさっき買った本を抱え、いたずらな笑顔を振りまいている。 「ちょっと!やめて下さい!」 「いいじゃないですか?今日から同じ屋根の下で暮らす仲なんですから」 「は?だから、それが意味分からないの!家出でもしたんですか?」 「違うの。理由があって……」 まん丸い目が、一瞬潤んだ様に煌めく。 泣かれては困る。 「えっと、どうして、友達の家でもいいんじゃないですか?」 「あなたじゃなきゃダメなの!」 「だから、どうして、僕?」 「あなたの夢を叶えさせたいの!」 「はぁ??」 意味が分からない時、人間は首を傾げるんだと実感した。 「あなた、小説家になりたいんでしょ?そのコンテストの〆切は一週間後。だから、私が一緒に考えてあげる。私と一緒に小説を完成させて、大賞を取りましょう!」 また僕は頭を傾げた。 この女子高生との不思議な一週間が今、始まる。
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