君と紡いだ物語

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私は杉本明里、17歳。 本屋で働いている清水瞬さんに恋をしている。 たまたま、いつもの本屋に大好きな恋愛漫画が売ってなかったから、違う本屋に来ていた。その恋愛漫画を探してウロチョロしていたら、その清水さんに声を掛けられた。 「何かお探しですか?」 私の顔を少し覗き込むように、柔らかく振ってきた声色。ふわーっと綿菓子みたいに耳に溶けていく。振り向くと、そこには美形男子が一人。 え……カッコいい♡ 彼が私に向けて何かを言っているが、全然耳に入ってこない。とりあえず、その顔を成形しているパーツを一つずつ見つめた。ビー玉みたいにキラキラ輝く黒漆の瞳 + 直角三角形みたいに整った鼻…… 「……あの?」 は?!し、しまった! つい、見惚れてしまっていた。 「こ、これ、下さい!」 私は適当にその辺にあった本を差し出した。 「これ、今、すごい人気の小説で二人の作家さんの共作なんですよ」 目の前に咲き誇った笑顔に、またノックアウト。私は一瞬で彼の魔法に掛かってしまったのだった。 それから私は本屋に通う様になった。立ち読みの振りをして、雑誌で顔を隠しながら彼に目線を送る。彼は本当に本を愛していて、お客さんにも優しくて、どんどん好きが増していくのが分かった。ある日、チラシを整理している彼が一枚のチラシを見つめて呟いた。 「〆切もうすぐかー」 彼が居なくなってから、そのチラシを見にいくと〝短編小説大賞〟と書いてあった。 彼は小説を書いてるんだ。何か役に立てる事ないかな、そんな事を思っていたからあの日…… 小説の〆切の一週間前。 「一週間だけ一緒に居させて下さい!」 しまった!変な事、口走っちゃった! 彼は戸惑っていた。でも、押した。 彼には内気な自分を見せたくなくて、精一杯、元気に明るく振る舞って……押しまくった。 彼は首を何回も傾げたが、私の押しに負けたようだ。最後には「今日だけ!」と承諾に応じてくれた。自分でもアホだと思う。好きな人の部屋に居候したいだなんて。 でも、どうしても彼の夢を叶えたいと思ったから。恋愛漫画大好きな私ならきっと役に立てる、そう思ったから。 でも、それだけじゃないか。 私に残された一週間を、大切な思い出にしたかったからかもしれない。
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