君と紡いだ物語

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うさぎとの同棲生活4日目。 僕は仕事帰りに、久しぶりに会う友達と飲み屋に来ていた。ビール片手に色々と話をして楽しかったが、なぜか頭の片隅にあいつがいて落ち着きがなかった。 「何?どうした?時間ばっか気にして」 「あ、いや……」 「彼女か?」 「いや、違うんだけど……」 うさぎ、一人で大丈夫かな?ツインテールを思い出す。僕は保護者みたいなもんだから、やっぱり心配になってしまう。ビールを傾けるが、しゅわしゅわが上手く喉に入っていかない。 「最近、うさぎを飼ってさーやっぱり心配だから帰るわ!悪りぃな!」 「うさぎ?おかしな奴だな。分かったよ。また今度な!」 僕はお金を置いて、そそくさと飲み屋を後にしてうさぎが待つアパートに帰って行った。 「ただいま……」 薄暗い部屋に入ると、また小動物みたいな寝息がベッドの方から微かに聞こえてきた。良かった、ちゃんと生きてて寝てる。うさぎの寝顔を覗き込み、無意識におでこを撫でた自分にハッと驚く。何やってんだ、僕は……そんな自分に戸惑いながらパソコンに向かうと、そこにはうさぎが色々と考えたであろう、メモがたくさん残っていた。 *** 「このタイトルいいじゃん!」 うさぎのその声で目を覚ました。今日は珍しく早く起きてるみたいだ。相変わらずセーラー服にツインテール。あくびをしながらソファーから這い上がり、うさぎに「おはよ!」と言う。 「昨日、帰ってきてから死ぬほど考えたんだよ」 「7日間のラブストーリー。分かりやすくていいんじゃない?」 初めて褒められたかな?なんか嬉しい。 「ありがと」 うさぎも嬉しかったのか頬をピンク色に染め、恥ずかしそうに微笑んだ。 なかなか平日は相手してやれないし、小説も上手い具合に進まない。だから、明日休みを取ったのだ。6日目だという事もあるし。うさぎとこうして居られるのも、今日合わせて3日か……。どうして一週間だとうさぎは言ったのだろうか。小説の〆切までという事だろうか。ハミガキをしながらそんな事を思っていた。 「いってきまーす」 うさぎは二度寝に入るのだろう。布団から手のひらだけを出し、ヒラヒラさせていた。お前は本当にうさぎみたいだな、そう思いながら仕事へと向かった。 仕事が終わり、本屋を出ると先に帰ったはずの笹山さんが僕を待っていた。 「清水さん……」 振り向いた顔には涙が溢れ出している。 「どう、したの?」 言葉を発した瞬間に、彼女が胸にしがみついてきた。甘い花の匂いが漂い、心臓が飛び跳ねる。 「どうしよう……」 と彼女は寂しげに囁く。 小刻みに上下する肩を優しく抱き寄せた時、背後から僕を呼ぶ声が聞こえてきた。 「瞬」 振り返ると悲しげな目をしたうさぎが立っていた。手に持っていたビニール袋をドサリ、とその場に落とし、勢いよく走り去って行った。ツインテールを揺らしながら。 「うさぎ!」 うわ!うさぎに見られた! 「清水さん、ご、ごめんなさい!」 彼女は赤く腫らした目をしながらパッと離れ、走り去ってしまった。ボブをふわりと揺らしながら。 「あ、笹山さん!」 どうしたのだろう……あんなに泣いて。あんな笹山さんは初めてだ。恋愛ドラマみたいな展開にドキドキしながら、そこに落ちていたビニール袋を拾い上げた。 二人分のパンとおにぎり、僕の好きな缶コーヒー。二人で食べるつもりで買ったのだろう。 「うさぎ!」 僕はビニール袋を提げて、雑踏の中を走り出した。 部屋に帰ると、ひっくひっくとうさぎの泣き音が薄暗闇の中に響く。明かりを付けるとベッドに白い山が出来ていたので、僕はその山をポンポン!しながら撫でた。 「何、泣いてるの?迎えに来てくれたんだね、ありがとう。パンとおにぎり一緒に食べよ?」 「……あの子と一緒じゃなかったの?」 「あ、笹山さん?すぐ帰っちゃったよ。そんな事いいからさ、出ておいで?」 うさぎ、まさか、嫉妬しているのか? 「……お腹空いた」 布団を剥いで出てきたうさぎの目は、赤く潤んでいて本物のうさぎみたいだった。無意識に手が伸びて、また頭を撫でていた。そして手を引きながら、ビニール袋が置いてあるテーブルまで連れて行った。 喧嘩したカップルみたいだな、そんな事を思いながら、向かい合っておにぎりを頬張る。 「明日、休みだから小説を完成させようと思うんだけど、うさぎ手伝ってくれる?」 こくり、と頷いた幼気な笑顔を可愛いと思った。 うさぎとの同棲生活も、ついに6日目に突入する。
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