怨返し

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怨返し

 五十嵐美沙子(いがらしみさこ)。元教諭。 自宅にて、急性心不全による死亡が確認される。 三年前の今日に起きたある事件の現場から帰宅後、「少し休む」と自室に(こも)る。 同居していた両親がいっこうに起きてこない娘を心配し、部屋を見に行き発見した。 (まだ若いのに可哀そう) (やはり心労が重なっていたのね) (もう三年も経っているのに真面目な人だったのね) ((いじ)めがあった時も熱心に家庭訪問していたそうよ) (一番悪いのはイジメていた子よね) (今どきの高校生は怖いわ) 葬儀場のトイレで(さえず)る弔問客。 世間から、深い悲しみと共にいきなり渡された身勝手な免罪符。 両親の心は複雑だった。 それから七日後。 島田不動産会社社長、島田昌弘(しまだまさひろ)が、会社のデスクで座ったまま冷たくなっているところを、離婚の相談に来た妻に発見された。 どちらの遺体にも、不審な点は無かった。
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