争奪戦

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翌朝目を覚ますと、隣には昨夜の深酒なんてなかったかのようにさっぱりとした顔で眠っている朱里の姿があった。 少し様子をみるために素肌の背中をなぞってみたが、起きる気配はない。四季はゆっくりと、できるだけゆっくりとベッドから抜け出し、下着を身につけた。 そのまま服を着て、忘れ物がないように辺りを見回してから、朱里の頬に触れるか触れないかのキスをした。 少しの名残惜しさを感じながら部屋を出る。 着替えるために自宅へ戻り、シャワーを浴び、メイクする。 少し早めの出勤をして、書類に目を通し、重要な事柄を手帳にメモしていく。そこには、次のネタもしっかりと書かれていた。 『依頼しよっかな…』 小さな独り言を拾ったのは絵美だった。 「おはよう四季ちゃん。なぁに、神妙な顔しちゃって。依頼って、取材依頼でもするの?」 『まぁそんなとこ。タイミングを見計らってるんだけど、なんだか掴めなくて』 「めずらしいね、そんな悩み。まぁタイミングがわからなくなったら今なんじゃなぁい?うかうかしてると横から誰かに掻っ攫われるよ」 『……だよね。連絡してみる』 四季はメモしたばかりの手帳から、一つのアドレスを打ち込み、丁寧にアポイントの連絡を送った。 昼過ぎに連絡が入ったのは朱里からだった。声は少し枯れている。 「なんにも言わないで出て行くなんて随分と冷たいね」 『ぐっっっすり寝てたから起こしたら悪いと思って。やさしい彼女でしょ?』 「…ふっ…まぁある意味。それで今度…」 『あ、しばらく忙しくて会う時間が取れそうにもなくて…』 朱里の言葉を遮るように早口で言い訳のように言葉を並べた。 「忙しくて?」 『うん…予定立てて会うのが難しいかも』 「…そう」 朱里はくすくす笑っている。 『なに?』 「いや…」 『ほらまた笑ってる』 「ていのいい断り文句だな」 『なにそれーほんとだってば。朱里さんも知ってるでしょ?これから本番だって』 「わかってる。それじゃ予定立てないで会えばいい」
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