恋を知らない二人

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『二つなき 恋をしすれば 常の帯を  三重結ぶべく 我が身はなりぬ』 他の誰とも比べようもない恋をしてしまった私は いつも巻く帯を三重しなくてはならないほどに 痩せ細ってしまいました 何年か前、偶然見かけた万葉集の歌。 恋というものをよく理解できないでいた私には、実に衝撃的なものだった。 誰かを好きになって痩せ細ってしまうなんて、そんな事あるのだろうか? 疑いしかなかった。 だいたい、恋愛というものに私はいい感情を持っていない。 恋心は時に人の心に悪意を宿らせもするのだと、私は身を(もっ)て感じているのだから。 だからそんな私は、大学生になった今でも変わらず、 恋という感情を掴めずにいたのだった。
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