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四ノ六
「あんな美人とドライブなんて、オレも、あやかりたいもんだよな」
と、春馬は、駐車場から出てったアニキのSUV車を横目で見送って、わざとらしくニヤつきやがった。
オレは、ムッとした。
「ヤラシー言い方すんじゃねーよ。アニキは、叔母さんを鎌倉のウチまで送りに行っただけなんだからなっ!」
月御門神社の奥殿は、女人禁制なんであるからして。
なので、月御門家の総本家であるウチの神社で女のコが生まれると、すぐに分家に養女に出されてしまうんだって。
昔、オヤジにそう聞いたことがある。
でも、……だからって、鎌倉の分家に身を寄せてる叔母さんがいるってコトを秘密にしておくなんて。
オヤジもアニキも、水くせーよな。
「なんだよ、そのガキみてーなフクレッ面。……あー、ヤキモチやいてんだ、咲夜さん? やっぱ、ブラコン」
「そんなんじゃねーし! だいたい、アニキは月御門の祭守なんだから、女にウツツなんか抜かさねーし。それに、相手は自分の叔母さんなんだぞっ?」
「叔母さんっつっても、あんだけの美女だからなぁ。長い時間2人っきりでドライブしてるうちに、マンザラじゃねー気分になってきちゃったりして。祭守だってオトコだぜ? 先代が亡くなるまでは、フツーに大学に行ってたんでしょ? めちゃめちゃモテたろーな。案外、可愛いオンナのコをいっぱいハベラセたりしてたんじゃね?」
「な……っ!?」
「あー、……けど、祭守って、月御門家の頂点に君臨して血族を守護するっていうハンパなく重ーい責任を負ってるからなぁ。ウワついた若いオンナなんかより、年上の落ち付いた熟女の方が好みだったりして。ってことは、やっぱ、さっきの叔母さん、超どストライクじゃん」
「いい加減にしろっ! アニキは、オマエみてーなスケベじゃないやいっ!」
マジでタコ殴りにすんぞ、コイツめーッ!
オレは、おもっきし肩をイカらせて、灯籠の明かりに照らされた参道を突っ切り、社殿の前を通って境内を横切った。
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