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四ノ八
「ったく! オレのどこが、叔母さんに似てるってんだよっ!?」
玄関に靴を脱ぎ捨てて、廊下にドタドタ足音を踏みならす。
自分の部屋に駆け込んで、ピシャッとフスマを閉じた。
タタミの上にカバンを放り投げてから、ナニゲに洋服ダンスの前に立って、扉についた細長い姿見をのぞいてみる。
「ちっとも似てねーじゃん……」
叔母さんは、すけるような真っ白い顔をしてたしな。
……まあ、オレも、日に当たらないとこは、ナマッチロイ肌をしてるんだけど。
栗色の髪の色も、……同じだった。
けど、トビ色の目は、叔母さんの方が、オレよりちょっとだけ色が濃かった気がするし。
鼻もオレより少しだけ高くて。なんつーか、お上品な雰囲気あった。
怒ってても笑ってるようにしか見てもらえない、キュッと上がり気味の口角は、たしかに、オレとまるっきりおんなじだったけど。
叔母さんの方が、オレより少しクチビルが薄くて、すごく知的なカンジがしたもん。
顔の輪郭だって、オレより少し、ほっそりして……
「あ、でも。いわれてみれば……」
すっげー、似てるかもしんない!
……いや、オレにじゃなくってさ。
急に思い出した。
「えーっと……どこに、しまったっけか?」
オレは、ベンキョー机の一番下の引き出しを開けた。
ゴッチャに詰め込まれた雑誌やゲームソフトなんかをカキ分けて、奥の方に追いやられてた古いアルバムを引っぱりだす。
表紙を開くと、大判に引き伸ばした色あせた写真が、1ページ目を占めてる。
社殿の前に立った、浴衣姿の若い女の人の写真……
「オフクロ……」
どうして、すぐにピンとこなかったんだろう?
ここに写ってるオフクロの姿と、叔母さん、……めちゃめちゃソックリじゃないか!
それこそ、見分けがつかないくらい。まるでウリふたつだ。
「いや、けど……」
ちょっと待て。よく考えたら、ヘンじゃね?
叔母さんが、オフクロの姉妹だったというのなら、似てても不思議じゃないけど。
けど、叔母さんって、オヤジの妹なんだぞ?
オレのオフクロとは、血のツナガリはないはずで。
なのに、なんで、こんなに激似なんだ?
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