おときが死んだ

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朝の水汲みが終わると今度はお洗濯です。  大きなたらいの中は、おじさんの家の人の、洗濯物でいっぱいです。さっきまで、水汲みをしていたその井戸で洗濯をします。 (ドボーン)おときは、小さな手で器用に井戸の水を引き上げるための桶を、深い井戸の中に落とします。桶というのは、今のバケツみたいなものです。 「よいしょ。よいしょ」  掛け声を上げて、井戸の水を引き上げます。おときの頃の洗濯といったら、たたき台という石の上に洗濯物を置いて、パンパン、パンパンと、平ぺったい板で叩くのです。 パンパン、パンパン。おときは、一枚づつ丁寧に叩きます。もう、お日様も大分明るくなってきました。 「何やってんだよ。この子は。もっと力を入れて叩くんだよ。このぐずが!」  突然、浴びせられた大きな声に、おときはビクッとしました。おばさんの声でした。  おばさんは、大きな牛のような人で、丸い顔の真ん中に小さな細い目があって、鼻はいつも、真っ赤です。 そして、分厚い唇から出る、大きな声に、おときはいつも、ビクビクします。おばさんの怒鳴り声に、パンパン、パンパンと力を入れて、おときは夢中で叩きます。 朝、暗いうちから水汲みや洗濯をしている、おときのおなかは、もうペコペコです。  力も、なかなか入りません。
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