おときが死んだ

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ある日のこと、事件が起こりました。  戸棚の中に入れておいたお饅頭が、一つ、無くなっているというのです。  すぐに、おときが呼ばれました。 「おとき、ここにあったまんじゅうを、食ったのはお前かぁ!」  おじさんは、顔を真っ赤にして、大声で怒鳴りました。 そして、おときの小さな体を蹴ったり、叩いたりしました。この時代のお饅頭というものはとても高価で、おじさん一家でも、一年の内のほんの数回しか食べることができません。 「あたしじゃない。あたしじゃありません」  おときは、一生懸命、自分ではないと訴えました。 「お前じゃなかったら、誰が盗ったと言うんだい」  おときは知っていました。おじさんとおばさんが、出掛けて誰もいないとき、おのぶとおせんが、おいしそうにお饅頭を食べていたのを、 「でも、あたしじゃ、ありません」 「お前以外、誰が食べるんだい。お前みたいなうそつきのどろぼうは、家に置いとくわけにはいかない。今すぐ出て行け」  どんなにあやまっても、もう、おときは許してもらえませんでした。
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