おときが死んだ

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雪が、しんしん降る夜に、おときは泣きながら、おじさんの家を出て行きました。  雪はおときの小さな肩に、頭に降り積もっていきます。冷たさに声を出すことも、泣くこともできません。行く当ても無く歩いて、歩き疲れたおときは、いつに間にか、村のはずれの小さな神社の前に来ていました。冷たい雪は、まだ降り止みません。 おときは古い木の鳥居をくぐりました。  静かな夜でした。なにひとつ物音はしません。ただ空から雪がふりそそぐだけでした。  おときは、大きく両手を上げると、その場に、眠るように倒れてしまいました。 (おとき……)  しんしん降りそそぐ、雪の中から、優しくおときを呼ぶ声が聞こえてきました。 (おとき……)  その声はもう一度、おときを呼びました。  こんな優しい声で呼ばれたことなど、今まで一度もありませんでした。 (もしかして、神様……)  おときは、心の中で問いかけてみました。  雪が、おときの倒れた身体の上に降り積もります。なのにちっとも冷たくありません。  おときは、夢を見ていました。  優しく抱っこされてる夢。  おときは、心の中にしまいこんでいたけれど、ずっと呼びたかった言葉を口にしました。 「お母ちゃん……」     おときは幸せでした。 優しいお母さんの胸の中で眠る夢を見ていました。冷たさも寒さも感じません。 おときは、いつの間にか深い眠りにつきました。
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