おときが死んだ

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これは遠い昔、冷たい雪の降る夜に、小さな村の片隅でたった一人悲しく死んでいったおときという名の女の子のお話です。  おときは、今年六才。  お父さんもお母さんもいません。いつの頃か、親戚のおじさんの家にいて、朝から晩まで、働いていました。  おときの頃は、テレビもありません。もちろん洗濯機も、掃除機も、部屋を明るくする照明器具も、ガスも電気も、暖かなダウンのコートも、手袋も、何にもない、ないないづくしなのです。  おときは、朝まだ暗いうちに起きて、水を汲みにいきます。それが、おときに与えられた一日の最初の仕事です。 井戸は外にあるので、重たい木の桶を持って水を汲みに行くのです。それを家の中の大きな壷に入れなくてはなりません。その壷が一杯になるまで運ぶには十回以上かかります。  昼ごろには水は無くなって、また壷の中をいっぱいにするために、 「よいしょ、よいしょ」 と運ばなければなりません。  冬の凍てつくような冷たい日は、あかぎれで、ぱっくり割れた傷口が、とっても痛そうです。 それでも、おときは井戸の水を運びます。大きな壷が一杯になるまで、毎日毎日運びます。
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