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許せなかった。
親友が死んだ。俺の目の前で線路の上に飛び降りて、電車に轢かれて死んだ。
ふらふらと、まるで取り憑かれたかのように、あいつは線路へ引き寄せられていった。
必死に呼びかけた俺の声は届かなかった。止めようと手を伸ばした時には、もうそいつは点字ブロックの外へと足を踏み出していた。
そして。
ごう、と死神の声がする。風が吹きつける。止まった時に囚われたのは俺だけだった。
突っ込んできたそれは迷いなく親友を轢き殺した。
しばらくホームはパニック状態だったが、後から来たサラリーマンがこう言った。
「迷惑な奴だな。こんな通勤ラッシュの時間帯に電車止めやがって」
舌打ちして言ったそいつを、俺は許すことができなかった。
こいつにとって親友の命はそれだけ軽いものだと知った。
そいつに殴りかかった後のことは、あまりよく覚えていない。
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