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しかしサヤは気を取り直すように意気込んで話しかけた。
「でも成功ですよ! やっぱりお嬢様の魅力にメロメロになったんですよ!」
「いや、それはないと思うが……」
そう言うサヤにユキは不審そうに眉を寄せた。しかしサヤは畳みかけるように話を続けた。
「けど抱きしめられたんでしょ? キスされそうになったんでしょ? それってもうそういうことですよ!」
「なッ‼ そ、そんなわけないだろ⁉」
サヤの言葉にユキは顔を真っ赤にして否定した。否定するユキにサヤは不満そうに唇を尖らせた。
そこまでされて何を否定することがあるのか。もうそれは確定だろう。
抱きしめられて、キスされそうになっったとなれば答えは一つだ。
きっとスバルはユキを好きになったのだ。
例え見惚れただけだとしても、男性はそこまで何も思っていない女性にそんなことはしないだろう。する理由は一つ。気持ちが抑えられなかったか。好きになってしまったからだ。
それしか考えられない。というかそれしかない。
ああ、よかった。
長年の想いがやっと叶ったのだ。これでユキは幸せになれる。
長かった。八年の長い恋心を持ち続け一途に慕い続けるユキについに幸運が訪れたのだ。
ユキを婚約破棄するなど頭おかしいのかと思ったが、スバルもなかなか見る目が合ったものだ。サヤも諦めずに努力してきてよかった。
少し涙ぐんでいると、ユキが考え込むようにしているのに気づいてサヤは首を傾げた。
すると、ユキは一度納得したように頷いてサヤの方に向いた。その顔に先ほどまで赤くしていた愛らしい表情はなく、真剣な面持ちをしていた。
「私が思うにあれは……熱があったのだと思う」
「なんで⁉」
まさかの解答にサヤは声をあげた。何がどうしてそうなった。
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