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ユウトは昨日のことを思い出して、二人に視線を送った。
昨日はどう考えてもキスしようとしていた。
最悪なタイミングで入ってしまったユウトは、それを邪魔してしまったわけだが。
昨日は驚いた。
もちろん、まさか執務室を開けたらあんなラブラブなシーンを目にするとは思っていなかったから驚いたが、あんなに気持ちを抑えていたスバルが、急にあのような大胆な行動をすることに、ユウトは少し驚いていたのだ。
一体どんな心境の変化があったというのか――……。
そう考えていると、ふと目の前に座っているユキの格好が目にいった。
「ああそうだ。ユキさん」
「ん?」
ユウトが声をかけるとユキは顔をあげてユウトを見た。
「昨日も思ったすけどそれ、可愛いっすね」
「え?」
ユキが声をあげると、ユウトはユキに指を指して笑った。
「その制服っすよ。すっごい似合ってます。ユキさん元々可愛いからなぁ。眼福眼福」
「……」
そう。昨日はあまりちゃんと見れなかったが、ユキが着ている制服は女性ものの可愛らしい制服になっていた。男性用の味気のない制服で勿体ないと思っていたので、ユウトはとても満足だ。白いジャケットにフリルのついたブラウス。ネクタイだった部分はリボンに変わっており、ジャケットにもスカートにもフリルが施されていてなんとも女性らしく可愛い。元々の男性用の騎士制服からすごくずれることなく、けれど、アレンジできるところはアレンジして、大きく騎士制服から外れないように考えられている。
なによりスカートが膝より少し上で足が見えているのがユウトにとっては良い。いつも女性というものはドレスなのでこんなに風に足は見えない。いつもは見えない分、なんだかユキの姿が新鮮で見ごたえがある。鍛えられた程よく引き締まった細い足に白い肌。座っていないでずっと立ってもらいたいぐらいだ。
ユウトはじっと見てそんな変態的なことを思いながら、顎に手を当ててまじまじとみた。
髪だって下して少し編み込みが入るだけで、華やかだ。いつもぞんざいに一つで括っていた時とはだいぶ印象が違う。こちらの方が可愛らしい。女性は髪にも一つのアレンジで花のような装飾を施してしまうのだから不思議だ。
「でもこうして見ると、ユキさんもやっぱ女の子……ユキさん?」
「……ッ」
いつまでも黙ったまま驚いた様子で目を開いていたユキだったが、ユウトが呼びかけると急に顔を真っ赤にして俯いた。
「え?」
ユキは顔を真っ赤にして俯きながら書類をもじもじと弄って、自身の髪もいじり始めた。
ユウトは驚いた。
もしかして、照れているのか――……?
そのいじらしい様子を見て、ユウトもだんだん恥ずかしい気持ちになってきた。つられたようにユウトも思わず顔を赤くしてしまう。
すると、ユキはおずおずと顔をあげてユウトを見た。
「あ、あり、が、とう……」
「え、ええ。どういたしまして……」
たじたじにお礼を言われ、ユウトもたじたじに答えてしまった。
そんな顔を真っ赤にして、目を潤ませてみてくると、なんだか勘違いしてしまいそうになる。
夜に浮かぶ満月のような瞳が潤んで揺れていて、なんだか綺麗だ。ユウトは思わず胸が鳴った。
「……ッ。けど……ッ!」
恥ずかしさが限界に来たのか、書類を顔にあてながらバタバタと足をバタつかせていたユキだったが、勢いよく立ち上がり、分厚い書類をもってユウトのところまで速足できた。その様子をぼうっとユウトも目で追った。見上げたユキの表情は、少し怒っていた。
「可愛いとか言うなッ!」
ユキは顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしながらも怒っているような表情で、ユキは持っていた分厚い書類をユウトに叩きつけた。
「いたッ! 痛い痛い! ユキさん痛い!」
ユウトはユキが突然叩いてくる理由がわからず、ユウトは腕で防ぎながらユキの攻撃を受けた。ユキはその間も構わず書類でユウトを叩き続けた。
「誰が可愛いだ! この……ッこの……ッ!」
「いや、ええ⁉ 俺は素直に褒めただけなのに……ッ」
「……ッこのバカッ!」
するとユキは顔を真っ赤にしながら、目をぎゅっと瞑ってやけになったようにさらに叩く力を強めた。バシバシとユウトはわけもわからず叩かれ続けた。
なんだというのだ、突然。
ユウトは攻撃を受けながらも頭の中でユキの行動の理由を考えた。自分が何かしてしまったのかと、自分の行動を振り返ってみる。
先ほど制服を褒めたユウトの言葉。そしてユキは、顔を真っ赤にしながらユウトを叩いている。
すると、ユウトはある一つの仮説が浮かんだ。
もしかして、照れ隠しなのか――……?
「ふふ……」
「何笑ってるんだ……ッ!」
そう思うとなんだかこの乱暴な攻撃も可愛く思えてきた。素直に褒めてくれたのは嬉しいものの、どう反応すればいいかわからず、さらに恥ずかしいからこうして相手に攻撃することで自分の照れを誤魔化しているんだろう。
稚拙な照れ隠しだ。なんとも可愛らしい。
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