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「はあ⁉ 一度も褒めたことがない⁉」
「……」
そんなユウトの驚いた声に、スバルは顔を逸らした。
その日の夜、スバルとユウトはスバルの自室で机に座って向かい合ってワインを開けて飲んでいた。
こうして時々ユウトはスバルを飲みに誘う。この国では十歳にでもなれば飲酒は認められており、ユウトもスバルも十八で飲んでいてもおかしくない年齢なのだ。さすがに酒場には誘えないのでこうしてスバルの自室で高いワインを開けてユウトとスバルは飲んでいるのだ。この飲み会は不定期でユウトの気まぐれで始まる。たいていがユウトがスバルに頼みごとがあるときだったり、スバルの息抜きの為だったりするが、今回は違った。
今回は、ユキとスバルの関係性を聞き出すためだとユウトは言った。今朝のユキの変な反応に加え、あのキス未遂のことを詳しく聞こうとしたのだ。そして導入部分の今朝のユキの反応ことでユウトがスバルに聞くと、スバルの憶測とともに、スバルの遍歴が明らかにされた。
つまり、『スバルが一度も褒めたことがないから免疫がなく、照れてしまったのだろう』とスバルは話したのだ。
それを聞いてユウトは憤慨した。
「あんた馬鹿っすか⁉ 好きな子が頑張って自分のために努力しておしゃれしてくれてるのに! あんた女の子の努力馬鹿にしてんすか!」
そうユウトに責められたスバルは気まずそうに、ユウトから顔を逸らした。
「……お前が女の何知ってんだよ」
「少なくとも! スバル殿下よりは知ってますがね!」
なんとか出た悪態もユウトの一言で一蹴させられてしまった。そしてユウトは頭を抱えた。
「ああもう。だからユキさんあんな反応してたのか……。おかしいとは思ったんだよ……」
「……」
スバルは気まずくなってワインを一口飲んだ。
今日の赤ワインは渋くて、濃厚だ。このワインはコントラス王国でとれた葡萄を使っており、その中でも高級な年期もののワインだ。悪くないな、とスバルは自分の国の名産品を心の中で絶賛した。これは現実逃避だ。
別に今まで褒める機会などいくらでもあった。
舞踏会や夜会で着てくるユキのドレスはどれもユキに似合っていた。けれど、いざ口にだそうとすると恥ずかしくなって結局言えずにいてしまったのだ。正直誰にも見てほしくないぐらいに可愛く綺麗だったので、スバルも何度か見惚れたことがある。これが自分のために着飾ってくれたのかと思うと胸をくすぶるものがあった。けれど、どうしても自分の天邪鬼な性格が邪魔をするのだ。
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