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「僕は騎士になるんだ」
唐突に、友は言った。ウルジュは眼にしていた書物から顔を上げて、突如として宣言した友の横顔を見つめる。
「……え?」
「……僕は三男だからな。大きくなったら家を出て行かなきゃな。でも何処かの婿養子になるのは嫌だ。だから騎士団に入って出世してやる」
出会いから十年の月日が流れていた。
美しい金の髪はそのままに、カルマンはすくすくと成長して十六歳となった。近頃背丈が伸び出したウルジュは一つ下の十五歳。
カルマンの尊大な性格は変わらずだったが、彼はよく学び、よく遊んで聡明な少年になっていた。
ウルジュは控えめな性格のまま、実直に学び続けて誠実な少年に。
二人は数年前から剣術の稽古を受けて、その頃から眼に見えて体格が良くなって行った。見た目だけなら、すでに立派な若者だ。
「……そうだ。お前も一緒に来いよ。僕が騎士団長になったらお前を副団長にしてやるぞ」
「……おい、カル。そんな事安請け合いするなよ。本気にするぞ?」
「僕は本気だ。だからお前も本気にしていい」
カルマンには大きなことを言う癖があった。本人は半ば本気だったから、そんな癖も憎めなかった。家を継ぐために辞職するまではウルジュの父上も騎士団に所属していた。俺が同じ道を志せば、父上も喜ぶだろう。とウルジュは思う。
「……解った。俺も騎士団に入るよ」
「そう言うと思った。お前なら付いて来るってな」
カルマンが、我が意を得たりとばかりに不敵に笑う。そんな友の笑顔を、ウルジュは頼もしいと思っていた。
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