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「女の子二人だけだなんて危なくないかい?僕達が手伝ってあげるよ」
とりあえず日帰りでこなせそうな依頼を受けてさあ行こうとしたところ。
本当、毎回毎回どうしてなのかなぁ。
さっきカイル君と話しているとこを見ていれば、普通の女の子じゃないってことくらい分かるはずなのに。
「いえ間に合っています」
「そう言わずにさあ」
「急いでいるので。通していただけますか」
ちなみにユーリは私よりも強いですよ?
ランクは知らないけれど、今の私だと10回戦って2、3回勝てるかなってくらいだからね。
でもでも、私ももっともっと頑張ってすぐに超えてみせるの。
「なんだよ。せっかくオレ達が気を利かせてやってんのによ」
「誰が誰を気遣っているんだい?」
「──え?」
ユーリが静かに怒りを溜めていたところに、聞き覚えのある声が割って入った。
「なんすか。邪魔しないでもらえます?」
「邪魔しているのはどっちなのかな?ねぇ?」
「な、なんだよ。誰だよ、急にやって来て」
「……」
助け舟、のつもりが知らない人扱いで落ち込んじゃってるの。
だ、だいじょぶなの。私もユーリもよーく知っているもん。
「レオ様。申し訳ありません」
「いいよユーリ。キミは何も悪くない。僕の可愛い妹達にちょっかいをかけようなんて君達、いったいどういうつもりなのかな」
「あ、あなたはもしかしてあの、ジルレオネスト……?」
空気が変わる、って本当にあるんだよ?
ちょっと外しちゃったけどかっこよく登場したのはレオお兄ちゃん。ギルドに訪れるみんなの憧れ、プラチナランクなの。
「レオお兄ちゃん」
「愛しのマイシスター、僕の天使。大丈夫かい?汚い手に触られたりはしなかった?」
「ううん、だいじょーぶ」
当たり前のように抱っこされちゃったけど、ここはお家じゃぁないのですよ。
あと万が一でも何かあったって言ったらお兄ちゃん、絶対この人たちをトラウマになるくらいに追い詰めるでしょ。
知ってるもん。私のことになるとプラチナの強すぎる力もお構いなしに使っちゃうんだから。
ダメなの。それじゃぁみんなの憧れが恐怖の対象になっちゃって、誰もレオお兄ちゃんを好きになってくれないの。
大事にしてくれるのはすごく嬉しいの。
でも、自分で出来る事はちゃんと自分の力で解決するの。
「ずいぶん経ってしまったけれど、相変わらず可愛い」
「久しぶりなの。でも、今はそーゆー場合じゃないの。この人たちにはわたしがお話するの」
「えっ?メリル?」
戸惑うお兄ちゃんの手をそっと外し問題の彼らの前に立つ。
ちびっこだからって舐めてもらっては困るのですよ。
「レオお兄ちゃんのことは言わなくてもいいと思うけど、わたしもちゃんとシルバーランクなの。こっちのユーリはわたしよりも強いし。だからね、キミたちが一緒だと逆に足手まといになるから困っちゃうの」
見るからにブロンズさんだよね、キミたち。
ルーキーから始まってストーン、アイアン、ブロンズって。
ベテラン冒険者って勘違いしちゃう人多いけど、世の中もっとたくさん上がいるの。
ふぇ?一つしか違わない?
んーん。シルバーからは昇級試験があるの。ギルドの厳しい試験を合格して認められた人しかなれないの。
そして、シルバー以上の人たちには約束事を守らない悪い人たちを取り締まる役目だってあるのです。
「言葉で分からないのなら見せてあげるの。あのね、しつこい勧誘は禁止。初めに習わなかった?」
「す、すみませんでしたっ!」
ん。物分りのいい子だね、よしよし。
──天使の顔をした悪魔がいるって言ったのは誰かなぁ?
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