私の家族を紹介するの。

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私はすごく焦っていた。 えっとね、今日はみんな用事でいなかったでしょ?なので私、クラウスさんにギルドに行くって言って来たの。 ギルドはもう1年近く通っているから特別怒られたりはしない。ものすごーく心配はされるけどね。 ただね、問題はお家に帰る時間。 たとえお友達と遊びに行こうとも、人気のスイーツを食べに行こうとも、ユーリと秘密特訓しようとも。ちゃんと暗くなるまでに帰っていれば大丈夫。 逆にもし、時間を守らずに外で遊んでしまったりしていたら── 「もうっ!全部レオお兄ちゃんのせいなのっ」 「はは。久しぶりに会えたものだから、ごめんね」 「いいえ、お嬢様自身もいけないですよ。のんびりとタルトを食べていたのはどなたです?」 「ぅみゅ。だ、だっておいしかったんだもん」 いちごのタルト。 で、でもそれを勧めてきたのはレオお兄ちゃんだよ? ユーリだって、私が食べているのをにこにこしながら見てただけだったの。 全然私のせいじゃないもんっ。 「メリルお嬢様がお楽しみのところを邪魔するなんて、出来るわけがないですから」 「メリルの笑顔が見たくてね。代わりに僕も手伝うよ」 もぅ。そんなこと言うなんてずるいの。 レオお兄ちゃんもユーリも大好きっ。 「レィターラビットを20体か。また何でこんな面倒臭そうなものを」 「ほぇ?」 そうかな?ただすばしっこいだけのウサギだよ? 「万が一こっちが攻撃を受ける可能性はほとんどないけどさ、ひたすら逃げ回られたら大変だと思うんだけど」 「その通りです。ですが、お嬢様にはそんな常識も関係ないんですよ」 「へぇ?」 レィターラビットは魔法の練習にもなって私は好きだったりするの。 動きを予測して、気取られず、一度きりで。コントロールの難しい魔法で頑張るのにぴったり。 魔力さえあれば魔法なんて誰にでも出来る。そんなことを言うのはお馬鹿さんだけなの。 「わたしもたくさん頑張ってきたの。レオお兄ちゃん、見てて」 レオお兄ちゃんは手伝うって言ってくれたけど、やっぱりこれは私が自分で決めて受けた仕事。 ちゃんと自分の力で終わらせるのです。 「まずはサーチ。それとチャージも」 草むらに1、2。あの木の影に4。音にも敏感だから同時にね。 「あのさユーリ。メリルに魔法を教えたのは誰?」 「奥様です」 「だと思った。しかしいくら娘だからってあれを本当に真似出来るだなんて」 「1年と待たずにシルバーまで上り詰めた証ですよ」 何かお話し中なのです? ううん、いいの。私は私のすべきことをやるだけ。 ママに怒られないように早く終わらせるの。 「もうちょっと。2、1……!ライトニング!」 「──わぉ」 ちょこちょこと動くけど刺激しなければこちらの間合いに飛び込んでくるのを待つだけ。 ちょーっと我慢するのが大変だけれどそれくらいはできるもん。 ふふ。罠にかかった哀れな子たち。どーかな?お兄ちゃん。 「いやぁ驚いた。5、6。6体も同時に仕留めちゃうなんて僕にも出来るかな?」 「レオお兄ちゃんなら楽勝なの」 「……ははは。うん、そうだね。妹の成長ぶりを見せてもらえたことだし、残りは僕に任せてくれるかい?」 「ふぇ?えっと」 「レオ様の技を見られる機会なんては早々ないですよ」 「ん、わかったの」 レオお兄ちゃんの戦う姿、実はほとんど見たことないかもなの。 ユーリよりもずっとすごい人。パパとママと比べたら分かんないけど。 とにかくユーリがそう言うんだもん。すごい人の技を見て学べっていうことなの。 「うーん、たぶんメリルのほうがスマートですごいと思うんだけどさ。まあ、お兄ちゃんもカッコイイところを見せたいので」 「あい」 じーっと見つめちゃうのです。 ウサギさん、いるかな。ごめんね、お兄ちゃんのためにやられてほしいの。 「──はぁっ!」 ズバババッ!剣をひと振り。 まさしく草の根一つ残らない、なのです。 んっと、当然レィターラビットはあっちこっちでお亡くなりになっているの。 「ふわぁ。レオお兄ちゃんすっごいの!」 「ふふ、ありがとう。メリルだって良い腕前だったよ」 「えへへ」 一瞬で何もかも斬り伏せちゃった剣士さんは、抱っこして頭をなでてくれる私の自慢のお兄ちゃんなの。 「力任せの荒業ですよね。メリルお嬢様のほうがすごいことをしていると思いますけど」 「言わないで。僕自身分かっているから」 「まあ、奥様の魔法はお嬢様以外誰も真似出来ませんからね」 「そういうこと。はぁ、この可愛い妹の行く末が正直恐ろしいよ」
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