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もし。
僕はお祖父ちゃんから話を聞いた時、ネットや図書館で座敷童について調べていたりしたら。あるいは、もう少しお祖父ちゃんから詳しい話を聞いていたら。この後の展開は、大きく違ったものになっていたかもしれないと思う。
翌日から、騒ぎは始まった。
あのイヤミな男子の父親の会社が、従業員に有り金全部を持ち逃げされて実質破産状態になり。
しかも会社の内部情報や顧客情報が流出して大混乱。
彼の母親は突然病気で倒れて入院し、兄は交通事故で重体。しまいには彼の家が突然火事になって何もかも焼けてしまった。不思議なことに、大きな火事だったはずが両隣の家はほとんど無傷だったという。まるで誰かが、彼の家が呪われるように次から次へと祟りを投げ込んでいったかのような不幸の連続だったのである。
「……この間は、ごめん」
数日後。僕はようやく姿を見せた自宅の座敷童に、頭を下げた。
「その、ごめんついでに……教えて欲しいんだ。僕、座敷童ってもののこと、調べたんだ。……座敷童って家に幸福を齎す妖怪だけど……それだけじゃないってことも」
可愛い姿の幼女が、今は空恐ろしいものに思えて仕方ない。冷たい汗が背中を伝い、服が張りついて気持ち悪いほどだ。
知ってしまったのだ。
座敷童は家に幸運を齎す。ただし。
「昔話には……座敷童を弓矢で射った人の家が傾いたり、座敷童がいなくなった家の家族が食中毒で全滅したりとか、そういう話もあるんだって。……あのさ、もしかして、あいつの家には本当に座敷童がいたのかな。それで……それで。別の家の座敷童に“そいつの家は守ってやる価値がないよ”って言われて、その家を離れたんだとしたら。……それが、座敷童を怒らせた結果だとしたら……さ。あれは、あいつの家が、あんなことになったのは……」
くすくす、と嗤う声が聞こえた気がした。僕は恐る恐る顔を上げて、凍り付くのである。
目の前の女の子は。今まで僕が見たこともないような顔で嗤っていたのだった。ざまあみろ、とでも言うように。
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