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じーじとばーば
部屋の奥では莉里がなおも叫んでいた。
「やめるのよさああああああ!じーじ!ぶっ飛ばすのよさあああああ!」
「ぷいきゃージュエリーのコスチューム買ったんだよおおおおお!莉里タソおおおおお!これ着て踊れぷいきゃあああああああ!」
「今日はどこに行っていたの?流紫降君?」
緑くん完全に捕まってるね。
普通のお婆ちゃんには破邪の浄眼は使えないし。
だったら、最悪白鳥さんとか犬塚さんと猿沢さんもいたはずで。
彼等が、緑君を守らなかったのは何故?
仕方ないかな?やっと会えたんだもの。お婆ちゃんに。
「日舞の習い事に。明日は女形の稽古です」
「まあ。小さいのに大変ねえ」
口調といい物腰といい、母さんにソックリだね。
「でも、不思議なのは、母さんが緑くんを手放したことです。普段は母さんは緑くんに付きっきりで。放っとくとどこかに飛んでいっちゃうので」
ホントに飛んでいっちゃうとは思ってないだろうね。
「のいのい!ちらといのいのい!ママはトキと喧嘩してるじょ!むぎゅ!」
豊満なおっぱいで口封じ出来るのは、やっぱり母さんの遺伝で。
というか普通の人なんだね。緑くんを普通の8ヶ月の赤ちゃん扱い出来るとはね。
もう緑くんは普通に喋れるのに。
「ホントに可愛い子♡男の子なのに真琴ソックリ♡ねえ、この子も女の子の服着せるの?凄く見たいわ」
そう言えば、僕が女装してるのは、多分父さんが用意させたもので。
父さんも着てたからだよね?長男だからかな?
「前もって来てくれると解っていれば、きちんとお話も出来たんですが」
少し狼狽えて、お婆ちゃんは言った。
「ごめんなさいね。公彦さんはずっと莉里ちゃんにあいたいって思っていて、突然会えると解って、連絡も出来なかったの。流紫降君がしている歌舞伎の演目くらい見ておけばよかった」
「今は、寺小屋を演っています。それより、お婆ちゃん」
お婆ちゃんは息を飲んだ。
「家に帰ると早速お婆ちゃんに捕まりました。緑くんはとっくに。僕の双子の姉妹の碧ちゃんは、とても強い危機管理能力を持っています。碧ちゃんが感じた危機。それは何か。お婆ちゃんの他に、誰か来ていませんか?」
「うん。あのね?もう一度、もう一度呼んで。お婆ちゃんて」
全然聞いていなかった。
さて、どうしようか。
流紫降は、無惨な気持ちになった。
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