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もう少し頑張ろう。
お婆ちゃんと呼ばれて嬉しくて仕方ない諫早静江に、辛抱強く流紫降は聞いた。
「ハタチをすぎた成人は、結婚する際親の承諾を得る必要がないのが日本の民法です。母さんと父さんは、きっと、いや間違いなくお婆ちゃんの承諾を得ていないと思います。まあ、僕が生まれる前のことですが」
突然言われて、静江は驚いていた。
確かに、ほぼ事実だった。
目の中に入れても痛くない最愛の一人娘は、憎い杖つき男に拐われて行っちゃった。彼女にとってはそれがほぼ真実だった。
「他家に入った娘の母親の悩み、というのは耳にすることはあります。生まれた孫を会わせてもらえない。というのは、世のお婆ちゃん全てにとって恐怖なのかも知れない。でも、僕達勘解由小路の子供にとって、母さんは慈愛の体現者です。莉里ちゃんは不倶戴天の敵と言っていますが、それでも母さんを愛しています。そんな母さんが、お婆ちゃん達の話題を出さないのはおかしい。母さんが、そんな大人気ない行動をとるのは、父さんに関すること。父さんに関わっていた女性は、等しく生かしておかないというのが母さんの口癖です。お婆ちゃん。父さんと、何かがあったんじゃない?」
静江の顔から、血の気が引いていった。
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