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喧嘩終了
空間が吹き飛ぶような、霊圧が溢れていた。
睨み合う狐と蛇。起きているのはそれだけだった。
殴り合うこともせず、険悪なムードで睨み合っているだけで、それだけで、作られた世界は崩壊しようとしていた。
両方が死ねよオラお前は。と思っていた。
ところで、最初は無難に荼枳尼天の真言を合唱していたが、いつの間にか手拍子付きのケーブラ・ジェレーバ・ケーブラってカポエラの歌になっていた。
基本的に目を逸らした方が負ける。
2人の目は、完全に充血していた。
空間がバキバキと崩れかける中、真琴が突如言った。
「碧ちゃん?どうしてここに?」
え?とトキが視線を外した瞬間、
ゴス。
トキの眼底に拳が突き刺さった。
何と言うか、ホントに汚い嫁だった。
「碧ちゃんがここに来る訳がありませんでしょう?」
崩れ落ちそうだったトキの膝が突如伸び、その距離と威力が上乗せされた、右フックが振り抜かれた。
「そうですね。来る訳が」
メシ。
右アッパーで、トキの顎が跳ね上がった。
それから、全くのノーガードで渾身の力で殴り合う女達の姿があった。
防御が面倒くさいのと、意地だけでこうなっていた。
顔面から双方血を飛び散らせていると、
「あー!凄いな星無お前!ママとトキいた!ママ!防御忘れんな!一旦ストップ!」
その時、昇龍拳とタイガーアッパーカットがぶつかり合う直前で止まった。
「まあ、もう帰ったの?碧ちゃん?」
「まあ、もうちょい傍観してもいい気がした」
碧も碧で酷かったという。
碧は、状況をざっと説明していた。
「私達が学校行ってる間に何があったの?嫌な予感がしたんで外周彷徨いてたら星無と会って、ジジババアタックを聞かされた。家に入ったら、予感が消えなかったんでここに来たって訳。ママ、それ本当?じいちゃんって総監でしょ?」
「ええ。忙しそうなんで放っといたんだけど。ついに会いにきたの。碧ちゃん会いたかった?」
「まあ別にね。来たら来たで適当にあしらえる自信があったし。そこで気が付いた。ママ、ジジババってもう一組来てるでしょ?予感の主はそっちだった。ママ、パパはどこにいるの?」
「それについてはトキが説明いたします。本日、坊っちゃまはお目覚めになると同時に、見るも愛らしいお姿に。かくなる上は坊っちゃまを私がお育て奉り、ゆくゆくはトキとの間に愛を育み、いずれ我が子遺作を賜るものと確信いたしました。奥様とは意地と意地のぶつかり合い、女にしか解らないこれは業とも呼べる諍いでございまし」
ストレートを食らってぶっ飛んでいった。
「碧ちゃん?パパが愛しているのはママだけだものね?碧ちゃんは解ってくれるわよね?」
「ーーまあとりあえず、パパを探しましょ。多分、流紫降と莉里は諫早のジジババに捕まった。緑くんは?私の可愛しゅぎる緑くんは取り戻して見せる。星無、居候なんだから働け」
自分の母親が、卑怯を通り越して非道だったことに目をつぶって、碧は言った。
「あの狐さん、生きてるといいけど。私もそろそろお腹空いてきたし」
こいつ等全員から嫌な予感がしていた。
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