母の妄執

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母の妄執

赤ん坊になった勘解由小路を抱いて、勘解由小路露香は、幸せそうに息子の円らな瞳を見つめた。 「私は幸せだった。お腹を痛めて生んだ降魔ちゃんを抱いた時、の私の人生が肯定されたのを感じた。一生懸命育てたわ。可愛い降魔ちゃんがすくすくと育ち、私が着せたワンピースを脱いだ時から、その後大学を出て警察官になり、急な病に倒れた時も、結婚した時も、私はずっと見ていた。ああ可愛い降魔ちゃん。もう失敗はしない。(ささめ)なんかには出来なかったことも私には出来る。だって、貴方のママだもの私は。トキも貴方の妻ももう要らない。貴方の人生は完全に失敗よ。完璧な人生をあげる♡降魔ちゃんはママが大好きだものね♡知ってるわよ?ママのおっぱいずっと見てたの♡まあ実際、ママなら、降魔ちゃんの赤ちゃん生んであげてもいいのよ?ママと結婚したい?でもママとは結婚出来ない。だったらコッソリ生めばいいのよ♡これで解決ね♡」 今回最低の変態は勘解由小路の母親だった。 しかも、最悪のアウフヘーベン的思考があった。 「あぶー。ぶうううう。ぎゃあああああ!」 「あらあら、おっぱいね?はい♡降魔ちゃん用に今日は授乳しやすい服を着てきたのよ?」 授乳ブラをずらした。真琴すら凌駕するJカップおっぱいの破壊力があった。 おっぱいをひっぱたいてぎゃあぎゃあ泣く赤ん坊がいた。 「なあに?何が言いたいの?泣いちゃって可愛い♡あー。でも不便ね。赤ん坊って。コミュニケーションがとれないんじゃあ動物と一緒。そうね。言葉くらい返してあげる」 何も認識出来ていない赤ん坊の瞳に、知性が宿った。 「ああああ!よく泣いたな俺は。あんたのおっぱいには用はないんだ。俺が求めてたのはマコマコのマコぱいだ。それで泣いていた。お袋、用はない帰れ。親父にはもうあのことを告げた。それでそっちの用は事足りたろうが」 「あら。知ってるわよ。昔から。ツンデレでしょう?もう可愛い坊や♡」 「デレたことは1度もないんだがな。昔から気付いていた。あんたにとって俺は人間なんかじゃなく、お気に入りの縫いぐるみだった。だから、俺達の母親はトキだと決めた。そりゃあまあ、あいつはあいつで結構な変態なんだが。あんたは遺伝的かつ法的な俺の母親って記号でしかない。成人しちまえばもう縁が切れる。俺は勘解由小路降魔さんだ。奥さんと子供に囲まれて幸せだ。だからな?さっさと俺から奪った時間を返せ。ブロッケン工房のワルプルギス。タイミングが最悪だったぞ。よりによって水晶堂のスターレスが居候した次の日に来るとはな。うちのオールスターと星無相手に敵う訳ないだろうが。うちで大魔女(ギガンテスト)同士の魔女戦争が起こるとはな」 「はあ?まさか、私が誰か知った上で逆らうの?降魔ちゃん。貴方ずっといい子だったじゃない。ママを怒らせないでね?焔魔君ですら私を怒らせなかった。大丈夫よ♡ママの言うこと聞いていれば何も問題ないわ♡今から貴方の中のハデスを追放し、完璧に健康な体に育て上げてあげる♡」 「だから、俺は、満ち足りていると言っている。俺に起きた障害はとっくに補完されている。俺の左手を握るのは真琴だ。俺が抱き上げる子供達もいる。俺は何一つ失っていない。さっさと帰れってだから。お袋」 「ああもう♡可愛い生意気坊や♡トキを排除したら、新しい乳母を雇うわ。決してでしゃばらず、私の座を脅かさない。貴方はただひたすら甘えていればいいの。それだけでいいのよ。どうせ、ママに逆らう者は存在しないんだから」 「ああああ。解ってたんだがな。言っても無駄な奴だってことは。だから、俺は決してあんたに近づかなかった。無駄を承知で言うぞ?これが最後だ。俺を解放しろ。まあいい。どうせ、こういう時に現れる人間は決まってる。俺が心から欲するは何か。ああ」 赤ん坊が視線を向けた先、今の扉をぶち破って現れた存在があった。 「来たぞ。パパ」 ここはエジプトか?って感じで指を差して現れたのは、この世で最高の子供達だった。 「おう。お前等。お袋に捕まった。だが不用意に近づくなよ?こいつの魔女としての能力は」 勘解由小路が言い、ブロッケン工房のワルプルギスは、頭上に跳躍した2人の女達を見た。 「うちの主人に手を触れるな!魔女め!」 勘解由小路真琴と稲荷山トキ。神クラスの精神異常者のダブルキックが、ワルプルギスに突き刺さろうとしていた。
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