1人が本棚に入れています
本棚に追加
空から襲いかかるダブルおっぱいに、露香は何の痛痒も感じていなかった。
真琴とトキが蹴ったのは、目障りな母親なんかじゃなく、巨大な、真紅の獣の体だった。
「ホントに癪に触る嫁と乳母ねお前達は。お前達がそう言うのをお望みなら、別にあげてもいいのよ?」
「ほう。これがお袋の姿か。大丈夫かお前等。ちなみに、こいつの名前は言えないことになっている」
赤ん坊勘解由小路が言いたいことは解った。
7つの頭を持つ巨獣に乗った、邪悪な女の姿があった。
「大淫婦バビロン!」
「ハーロットなお母さんですね」
「だから言えんのだって。大淫婦バビロンは黙示録に出てる化物の1種だ。まあ世紀のけったい作家ヨハネが生きてた頃、お袋は普通に生きていた訳だが。うお!」
勘解由小路を抱き上げたワルプルギスは、汚れた杯を持った、赤いドレスを纏っていた。
「殴り合いがしたいなら与える。獣に頭を垂れよ。ああ可愛い坊や♡ママは逆らう者を容赦しない。坊やはもうママに逆らわないわよね?造物主が恐れたバベル。バビロンは私を認識した連中がそう呼んだ幾つもの姿の1つ。生きていたのはスターレスくらいであろう?所詮はつい昔の下々の放り出した恐怖心に端を発する物差しでしかものを語れぬ蒙昧が、私に敵し得ると思うか?身の程をわきまえよ」
露香の騎獣が吐き散らしたブレスが、居間を吹き飛ばしていった。
「恐ろしいババアだな。癇癪起こして居間を消し飛ばしたか。トキ!大丈夫か?!」
碧が言った。
「何のこれしき。坊っちゃまをお救い奉ります。よろしいですね?奥様」
トキは殺る気だった。
「そうですね。ここを代々木公園にします。おい、この蛇を見ろババア。降魔さんのオス蛇ちゃんは妻である私のものよ。冥府がお前には相応しい。我が前から消えよ魔女」
足元をミントで繁らせ、冥王妃プロセルピナは、恐ろしい霊気を振り撒いていた。
最初のコメントを投稿しよう!