逆転の魔上皇

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ママちゃん。 焔魔ちゃん。 怪奇を認めないらしい夫と、怪奇すぎる妻は、それぞれの名を呼び合った。 「とりあえず、こいつ等がお前の(しもべ)なんだって?一時的に助手と手を結んだらしいが」 「ああ。ウコバクと思ったがフェイクか。まさかメフィストフェレスとはな。で?母ちゃんが怒ってんだが、どうしよう親父」 「まあな。俺がオカルトを肯定するのはこれが最後だ。助手山はメフィストなんかじゃない。胡散臭い奴だってだから。それにしても、随分デカいなあれは。ありゃあ何なんだろうな?」 「お袋が作り出した魔法生物だ。まあ母ちゃんなんでああなるらしい。あれが歩いただけで代々木公園は壊滅する」 「ああいいよもう。理解出来んししたくもない。ママちゃん!まだ怒ってるのかい?!とりあえず謝る。浮気してごめんなさい」 いきなり土下座していた。 「ーーそれだけ?正直に言いなさい」 「認知してない息子が1人いる。その1人だけなんだって!」 「まあこいつを踏んじまうって手もあるな。出来ないのは俺がいるからだ。デカいと破壊力は物凄いが、大雑把すぎるのが難点だ。それなんでお袋は俺だけ隠そうとしてたが、俺は必死にこの空間にしがみついていた。水面下で壮絶な攻防をしていたんだ。そんなことする子はうちの子じゃありません!出てきなさい!やーだー!ごめんなさーい!ってのを今もしている」 こいつ等母子が揉めるだけで世界が滅ぶって何だ。 「ああそりゃあ大変だ。ママちゃん!落ち着こうか!何を怒ってるのそもそも!」 「焔魔ちゃん聞いてちょうだい!全く忌々しい嫁に孫娘達が!お仕置きしてやる!お尻をお見せ!」 「だがなあ。ママちゃん。流石にママちゃんが怒る度に世界が滅ぶのはなあ」 「ワルプルギスが怒る度に世界が滅ぶのは普通。ヨーロッパでよくあったもの」 星無が言った。 「マジか。ヴァスキと言いこいつと言い、大魔女が彷徨いてた古代の地球って一体」 始が口にしたヴァスキと言うのは、星無の友達である海底火山工房のマーキュリーバイオレットが本気出した姿だった。 確か、テキサス州くらいの大きさだったような気がした。 「そうね。しょっちゅう大きな龍とかあの7本首の獣とかがドシドシ歩いてて、何度世界の生き物が全滅したか知れない」 「そこうるさい!世界が滅んだって、気が付けば人間はワラワラ湧いてくるから平気よ!私を怒らせた嫁共が悪い!焔魔ちゃんは退ってて!覚悟決めろおおおおお!お前等ああああああああ!」 館の敷地の外を、巨大な足が踏みつけた。 立っていられない地震が起き、島原はたたらを踏んだ。 「真帆おおおおおおお!大丈夫か?!」 「幼子は我等にお任せください。空中1センチ浮いて固定されております。猊下!どうなさいましょう?!」 「最初に命じた通りだシャックス。お前達は全力でここにいる連中を守れ。あとは親父に任せよう」 勘解由小路は、どうやら父親に託すと決めたらしかった。 「なあ、ママちゃん。降魔は嫁が好きだってさ。俺達は、息子の気持ちを尊重するしかないじゃないか。そうやって、帰る度に嫁と揉めて世界を滅ぼしたら、世界がいくつあっても足りないじゃないか。あれだろ?降魔が高1の時コッソリ家に連れてきたお下げ眼鏡おっぱいだがな?トキが思いっきり追い出したが、トキがしなけりゃあママちゃんがやったな?それが駄目なんだって。あいつはそれを嫌がって俺達に近付かなくなったんだぞ?大事な坊主も40過ぎだ。もう干渉はやめよう」 ふわりと、露香を抱き締めて言った。 「な?ママちゃん。いや、露香・マイ・ディア。君のハープジャズが聴きたい。初めて会った時、君は素敵なスウィングを利かせてくれていた。北村とか渡辺とかの中で、君は特に輝いていた。ドレスからこぼれそうなおっぱいも忘れていない。その日の内に君を持ち帰っていっぱいしたな?気が付けば降魔がもうお腹にいた。君はベッドで寝ている時、いつもジャズだった。ドロシー・アッシュビーのジャンゴ・ミスティーを流していて。改めて言おう。愛してるよ露香♡」 「会ったその日にやったのか。お前の親は」 「ジャンゴ・ミスティーは覚えてるがなあ」 幼馴染みのおっさん達は、小さく語り合っていた。 そして、露香は震えていた。 「な、何よ何よ?浮気したでしょう?隠し子まで作って!許さないんだからあ!この浮気者お!」 ポロポロ泣いて、露香は言った。 「それについて言い訳させて?降魔の後30人くらい出来てもおかしくないレベルでしたのに出来なかったし、多分出来ないよな?って思った時、ゼミにいたのはおっぱいの大きいJDだった。出来て驚いたと言うか」 「浮気されるくらいなら焔魔ちゃんに言っておけばよかった!降魔ちゃんが出来たのは物凄い奇跡なんだから!1千万年に1人の奇跡の子なんだからね?!って言うかこの私を妊娠させた焔魔ちゃんも奇跡なんだから!こっちの世界に全く理解がないくせに、恐ろしい魔力を秘めていて!私だって妊娠するとは思わなかった!降魔ちゃんがお腹にいる状況を!幸福を知っている魔女は世界でたった1人!そんな大魔女から生まれた降魔ちゃんは!凄いんだから!そりゃあハデスになったとしても驚かないわ!もう馬鹿馬鹿あ!大好きよ焔魔ちゃあああああああああん!馬鹿ああああああああ!細のカスに誘われたけどちゃんと断ったんだからあああああ!うえええええん!」 「何よこの状況は」 呆然としていた紀子は言った。 「愛の為せる話だじょ!いじゅれのいのいとべーみたいに!あああ!のいぱいがプンってなったじょ!これはべー専用だじょ!サエグシャがアーガマのブリッジでコロニーレーザー発射したらおかしなことになるじょ!シャングリラに行かないとヤザンに殺されることもなくて、歴史が狂っちゃうんだじょ!」 狂ってんのはあんたよ。この色ボケ8ヶ月児が。 まあどうでもいいような夫婦関係の改善をもって、無駄な事態は解決した。
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