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島原親娘はさっさと帰り、正男夫妻も甘味渉猟ツアーに旅立っていった。
勘解由小路夫妻は、息子に一声かけた。
父親には、母親がベッタリくっついていた。
「よく解らんが、町が元に戻ったみたいだな」
「魔女ってのはそう言うもんらしい。お袋、家に仕掛けた盗聴物品片していけよ」
「指先1つでやっとくわ。降魔ちゃん」
勘解由小路は尻の座りの悪さを感じていた。
「この年でまだ小僧扱いされるのはな」
「親からすれば当然だ。俺達にとっては、お前は永遠にトキのおっぱいチューチューしてた時のままだ」
「改めてそれ言われると、あいた。マコマコ、腕が折れちゃうよ?もう引き千切らないでね?」
真琴は、半日ぶりに元に戻った夫に引っ付いていた。
「次においでになる時をお持ちしております。お義母様も。次は圧倒してごらんにいれます」
恐ろしく若い母ちゃん2人は、バチバチと火花を散らしていた。
「私の前にトキを倒すのね。トキにすら勝てないんじゃ私に勝てる訳ないわ。ああ降魔ちゃん!いつでもママのところに帰ってきてね?!愛してるわ!可愛い坊や!」
「いいからとっととイギリス帰れよ。教授によろしく言っといてくれ」
「ああロークな。それよりも」
耳をそばだてた父親に、勘解由小路はそっと呟いた。
「一魔は大丈夫だ。俺に任せろ」
「そうか!それだけ解りゃあいい!その為だけに来たようなもんだし!」
隠し子探す為だけに来て、世界を滅ぼしかけてまるで省みない非常識な父親の姿があった。
「じゃあな!お前等!諫早も!またな!じゃあ帰るぞ助手!何お面男と談笑してんだお前は?!」
「はいはい。それでは。今回の件では魂をディール出来ませんでしたが。お世話になりました。みなさん」
代表して話をしていた三田村さんが頷いた。
「おう。次何かあったら魂全部持っていけよ。頼むぞホントに」
向こうでは、諫早夫婦が孫にしがみついていた。
「莉里タソおおおおおおおおお!怖かったよおおおおおおお!でも頑張ったんだよおおおおおおお!寂しいよおおおう!離れたくないよおおおお!」
「ああもう。こっちはこっちで赤ちゃん返りしてるのよさ」
いい加減鬱陶しくなっていた。これがじじ孫の関係性かと思わなくもなかった。
「もう帰るのよさじーじ。莉里のライブの最前列チケット送るから。って鼻汁が!」
「絶対行くよおおおおおお!大しゅきだよ莉里タソおおおおおおおおお!」
諫早静枝は、流紫降と向かい合っていた。
「お婆ちゃん。解るね?」
ええ。でも。
立ち上がった先に、娘と目が合った。
「ま、真琴」
「幾らお母さんでも、降魔さんとの浮気は許せるものではありません」
「あーー」
「でも。もういいですよ?私と降魔さんの愛を認めてくれるなら、また来てください」
大粒の涙が流れた。静江は、何度も、何度も頷いて、愛娘に抱きついていた。
「降魔ちゃん。あっちの両親も、綺麗に片付いたみたいよ?特に諫早の男の方は、いい薬だったみたい」
「終末の獣に囲まれちゃ、普通の人間なら動けんが、そうか、諫早の奴も、浮気の件は水に流したのか」
結局、母親にとってはそうだっただけらしい。ただのこけおどしに、全力で歯向かったこっちは子供だったってことか。
「厄介極まりない母ちゃんだな。お袋は。まあ、助かったことにしとこう」
「ところで、降魔ちゃんも浮気してなかった?そんな気がするんだけど」
「ない!そりゃないぞお袋!式を挙げる前だったし!」
「まあいいわ。それじゃ、またね?」
露香の足元には絨毯があって、それは、フワリと浮き上がった。
「おお!便利だなママちゃん!」
指をついっと振っただけで、物凄い速度で絨毯は、両親を乗せて飛んでいき、見えなくなっていった。
一方、四月一日始は、尚もプクっと頬を膨らませた家主に言った。
「星無!家主のお前がいないと水晶堂に入れんのだ!帰ってこい!」
「いや」
「帰ったら、俺達みんなで作った料理があるぞ?今日は魚食おう」
「ふん。そう。バイオレットと仲良くしてたのね?」
「いや、まあそうなんだが」
ああ!困った時の黒色聖典があった。
慌てて情報にアクセスし、始は実にしょうもなくなっていた。
「良一の死体使ってよし。鎧も、アイスが溶けるって困ってんだ」
「本当?じゃあ帰る」
どこまで食い気だお前は。始はそう思った。
その時、風間静也は、世界が変貌し、それが、元に戻ったのを感じていた。
何が起こった?これは、まるで、前にトートに消されたのと同じだ。
紀子は?紀子を探さねば。
あった!俺のパンツと紀子のスキャンティーが並んで!
とりあえず、パンツを履いて立ち上がった。
「紀子!ノリリン!」
「ただいま。誰がノリリンだお前は」
「おお!無事だったか紀ーーノリリいいいいいいいいいいん?!」
皇女百鬼姫のおっぱいに、大きなフジツボみたいな赤ん坊が張り付いていた。
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