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流紫降が姉の碧と家に帰ると、涙目の勘解由小路家のメイド、深海姫クティーラが流紫降に泣きついた。
「魔神皇様お逃げくださいませ!恐ろしい女が!お家に住み着いております!妾を一瞬で魚に変える呪法の冴え!以前再会したマーキュリー・バイオレット様に匹敵しますれば!」
「以前ていつ?そもそも」
「最近平和っちゃ平和だ。前にあった騒動っていうとあれか、ティアマトだろうな」
「いかさまでございます!海洋に突如現れた巨大エイ、ティアマトを一瞬で消し去った深海の母、マーキュリー・バイオレット様です!恐らくは、それと相克し得る者が!莉里は既に捕まり、今はどうしているのか」
「今あれだ。莉里はキンクリのスターレスのイントロでチャルメラーって歌ってるな。確かに恐ろしい。あのメロディーでチャルメラって言われたら、もうあの曲はチャルメラにしか聴こえん」
莉里の声で、チャルメラー。イッツ・ザ・チャルメラー。美味いのよさー。って聴こえていた。
食卓は賑やかで、碧も真琴もああ見えて恐ろしく食うのだが、今日の珍客は、大食いのレベルにおいて、常人を完全に超越していた。
「凄く美味しい。それも食べていいの?」
碧の見たところ、星無は細身の若い女だが、どうやらそれは違っていて、
何だね、巨大な口だけがある奇っ怪な生き物だね。僕達の見ている世界が偽物じゃないかと思ったのは初めてだよ。
珍しい、双子のテレパシーがあった。
「まあそんな訳で、星無はしばらく厄介になるそうだ。魔女に不用意に近づくなよ。美味しく食われる羽目になる。トキ、とりあえず、こいつを前にして人形を保てる僕はいるのか?」
星無の周りには、鷺と子駱駝と子馬とカークリノーラスの小型犬がいた。
「ごめんなさい。明日まで待って。調整しておくから。死んでない動物は食べちゃ駄目ってことだけは解ったから」
「まあ、莉里が監視しとくのよさ」
「莉里が狐っ子止まりでよかった。碧は平気か?流紫降も」
「ギリギリ大丈夫よパパ。影山。は駄目か」
「このヤモリさんは、前に1人ヤモリにしたからすぐ戻せるわ」
大型のブラック・パールのヤモリが、尻尾を摘ままれてジタバタしていた。
「ジム・ファイファーの奴だろう?デカいヤモリだったぞ」
「保孝君も知ってるのね」
「ああ。前にヤモリと猫連れた小僧が、三日月湖でバス釣ってるのを見た。あとはあれだ。ライン結んだ木の棒握ってルアー泳がせてたけったいな鳥だ。あの鳥が1番上手かったな。ダイイングフラッター投げてた小僧は凄い機嫌が悪かった」
「あの親子は釣れてないと凄い大人げなく機嫌が悪くなるのよ」
星無は訳の解らないことを言った。
「あー。そうかクリーク・ウッドってのがあいつか。つい指輪にアクセスしたぞ。そうかそうか小僧の父親だったんだなあの鳥は」
勘解由小路は輪をかけて訳の解らないことを言った。
子供達は、別に気にかけなかった。
父親が解っていればいいという塩梅で、特に何事もなく夕食時が過ぎていった。
涼白さんは今日お休みで(莉里が決めたこと)、全員が大人しく寝室に納まっていき、勘解由小路の寝室もいつも通りだった。
額を寄せ合う、愛に満ちた夫婦の一時があった。
チュッチュチュッチュが止まらなかった。
プリップリの真琴の唇の感触を名残惜しそうに離して、勘解由小路は言った。
「緑はご機嫌にあれに吸い付いてるな。じゃあいつものかけようか」
あれというのは、勘解由小路が緑のリクエストを受けて勝手に作製した、緑曰く「のいぱいいっぱいぱい人形」という名のぬいぐるみで、嬉しそうに緑は人形のおっぱいに吸い付いていた。
「うきゅう。のいぱい。のいぱいぱいうっきゃあ」
勘解由小路はいつものようにケニー・バレルのムーン&サンドを再生した。
イントロが終わる前に、緑は眠りについた。
「うちの坊主が田所のおっぱいに顔を埋めて寝ちゃったし、俺達も寝ようっか。マコマコ」
シャツの上から真琴のおっぱいをサワサワして言った。
天国に到達した息子と、天国の1歩手前で嫁のおっぱい触っている父親。
こいつ等実にどうしようもなかった。
「ん♡ところで、星無さんは。ーーんん♡」
「んー?いいよ放っとこう。あの小僧が本気で星無を探そうと思えば、すぐに来るよあいつは。失せ物探させたら大したもんだ」
おっぱいをサワサワしながら、健常な右手で器用にボタンを外していった。
ビチョビチョに濡れた紐パンは既にポケットの中にあった。
はだけた胸に、勘解由小路の手が触れた瞬間、真琴は声を上げて崩れ落ちた。
「何だろうな。気が付けばサキュバスモードで腰まで髪が伸びちゃって♡ああ♡尻尾が先にオス蛇ちゃんをサワサワしちゃって♡いただくよ?可愛いい俺のアリスちゃん♡」
勘解由小路は、真琴と腰を合わせた。
メロメロのヘロヘロになった真琴は、尻を揺さぶられながら、答えを言わされていた。
「2+1+(1/2)+(1/4)+(1/8)+…+(1/2^n)+…は?」
「・・・・よ♡よん♡」
「x^4-32x^2+256=0 は?但しx>0とする♡」
「よん♡よん♡」
「じゃあ次な?{√{{tan^{-1}{e^{2nπi}}}^{-1}}{∫(-∞,∞)e^{-x^{2}}dx}}^{2}=は?但しnは任意の正数で」
「よ♡・・・よん♡よん♡よん♡よん♡ああああああああああ♡」
実際、子作りしながらこんな高等数式が解ける訳がなかった。
最初に勘解由小路が聞いたのは、2+2は?だった。
それで大体解った。勘解由小路が何を言わせたいのか。
「よく解らんが、凄く暖かいしフニュンとしてるしビチョビチョなんだが、何か奇妙な恐怖心って奴がな。あんじゃなくてよんだ。これで文句ないだろう。ああ。あああああ」
訳の解らないことを言って、勘解由小路は気持ちいい呻き声を上げた。
「んきゅう♡中で混じーー♡」
真琴の口を塞いで、勘解由小路の腰の力が抜けた。
けったいな夫婦の愛は、どこまでも高まっていった。
夜が明けて、夫の鼾が聴こえていた。
恐らくこの世で最も心地よいのは、思わぬ時間に目が覚めてしまった時の二度寝であろうと思う。
今日は、私が降魔さんの肌を。
裸の肌が触れ合う快楽に勝るものはない。
まあ♡ちっちゃくてきめ細かい背中でちゅ♡まるで赤ちゃんみたい♡
勘解由小路の背中に顔を当て、胸いっぱいに匂いを吸い込んだ。
匂いは、緑にソックリだった。
まあ、親子で似ていて当然。ーーあら?
「ううん。マコマコ」
そう言って寝返りを打った夫は。
まあ♡可愛いお顔♡
サラサラのお髪は肩口まで伸びて。まるで女の子みたい♡
「まあ♡あら♡降魔さん降魔さん♡」
勘解由小路のちっちゃな左手が、真琴のおっぱいに伸びた。
「あん♡」
「そう言うのやったら強制非公開食らうって何偏言えば。あれ?」
「あ♡そうされたら出ちゃいまちゅ♡きゃん♡」
「ピューって飛んだママ乳が顔にかかっちゃったかーわーいーいー♡いい匂いのママ乳いただいちゃうよ?あん?体が遠ーーんん?!」
勘解由小路はそこを慌てて確認した。
前にあった、ヘルマプロディートスのしょうもない悪夢の再来か?
いや、なくなっていないし、今頃ヘルマプロディートスの奴はニュンペーとよろしくやってるはずだし。ああ見つかっーーん?
「俺のオス蛇ちゃんが皮被っててうおおおおおおおおお!まあいいやマコマコ二度寝しよう♡」
おっぱいにしがみついて二度寝した。
ホントに可愛い降魔ちゃん♡
真琴の中で、異常ともとれる夫の異変はなかったことになった。
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