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ツカサ
さっき感じた光よりも、強く温かい光が私を包んだ。眩しすぎて、私は目を閉じる。
その光が原因なのか。先程と同じようにして突然、私の中に温かい感情が湧き出してくるのが分かる。
この感情は夢じゃない。
ほんの少しの時間が立って、眩しさにも慣れてきたおかげで、ようやく目を開けた。そこには山口ツカサが立っていた。
ーー覚えてる。
ーーこの感触。そしてこの匂い。
ーーそして、この笑顔。
「ツ...ツカサなの?」
驚きの余りに目を大きくして、思わず口元に手をやった。
私が驚くとどうしても、こうなってしまうのは昔からのクセだった。
「何を言ってるんだ?俺だよ!ツカサ」
目の前にいるその男は、忘れもしない七年前の私の誕生日、会うはずだったツカサだ。
山登りをしてから会いに行くと行って出かけていって、戻ってこなかった彼ーー山口ツカサ(当時15)そこには彼が立っていた。
あの頃と何も変わらない顔をしている。
年相応に老けてもいない。不思議な事に彼は15歳だったあの頃のままだ。
山口ツカサは長身で、目もとがハッキリとしていて、鼻が高い。
どちらかと言うとイケメンの部類になるのかも知れない。
ーーどうして?
ーー何であの日、帰ってきてくれなかったの?
私の中のそんな思いが、口をついて出てくる前に、彼は言った。
「ーーただいま。マスミ」
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