ツカサ

1/1
前へ
/15ページ
次へ

ツカサ

さっき感じた(もの)よりも、強く温かい光が私を包んだ。眩しすぎて、私は目を閉じる。 その光が原因なのか。先程と同じようにして突然、私の中に温かい感情が湧き出してくるのが分かる。 この感情は夢じゃない。 ほんの少しの時間が立って、眩しさにも慣れてきたおかげで、ようやく目を開けた。そこには山口ツカサが立っていた。 ーー覚えてる。 ーーこの感触。そしてこの匂い。 ーーそして、この笑顔。 「ツ...ツカサなの?」 驚きの余りに目を大きくして、思わず口元に手をやった。 私が驚くとどうしても、こうなってしまうのは昔からのクセだった。 「何を言ってるんだ?俺だよ!ツカサ」 目の前にいるその男は、忘れもしない七年前の私の誕生日、会うはずだったツカサだ。 山登りをしてから会いに行くと行って出かけていって、戻ってこなかった彼ーー山口ツカサ(当時15)そこには彼が立っていた。 あの頃と何も変わらない顔をしている。 年相応に老けてもいない。不思議な事に彼は15歳だったあの頃のままだ。 山口ツカサは長身で、目もとがハッキリとしていて、鼻が高い。 どちらかと言うとイケメンの部類になるのかも知れない。 ーーどうして? ーー何であの日、帰ってきてくれなかったの? 私の中のそんな思いが、口をついて出てくる前に、彼は言った。 「ーーただいま。マスミ」
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加