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宏美
突如、私の周りは眩しい程の光で包まれた。
その眩しさの中で、目を閉じていたが、少しするとその眩しさはなくなり、ゆっくりと目を開ける。
目の前には友人が立っていた。
彼女は一度もこの家に来た事はないはずだ。それなのにーー。
「久しぶり!元気でやってる??」
友人の名前は田中宏美。
三年前、ガンが見つかり、志し半ばで他界してしまった。
彼女の夢はマンガ家になる事だ。
その夢の途中で、病に伏せた彼女は誰にも何も言わず、そのまま帰らない人になった。
ーーまさかガンだったなんて。
私がそれすらも聞かされないまま、突然、彼女の死の報せを受けたのは、真夏日の暑い日だ。それも深夜の出来事だった。
まるで私の家に遊びに来たかのように、普通の顔で、宏美はそう言った。
ーーどうして??
ーーどうしてココにいるの?
声が震えている。
彼女は私の足元を指差す。
「ーーその子(ミケ)はね、、霊界と繋がってるの。。だから、あなたには本来見えないはずのモノが見えて、多分、不思議な体験をしてきたと思う。そして今も、、」
「ミケを抱いたから、宏美が出てきたって言うの??」
「そう。私の思いと、あなたの記憶でーー既に存在していないはずの今の私は作られている。そして私を呼び出したのは、そこにいるミケちゃん。」
そんな風に、宏美は説明した。
摩訶不思議な話である。
ネコを抱くと、死んだはずの人に会える。。
そして、それは死んだ人と、ネコと私の記憶が深く関り合い、リアルな存在になるのだと言う。。
ーー信じられない。
ーーそんな話はあり得ない。
だけど、、目の前には確かに、亡くなったはずの宏美がいる。
そして前回もツカサに会えたじゃないか。彼も言っていた。もうこの世にはいない、と。
これは信じるより他ないと思う。
もはや、私の目に見えている事を、真実ではないと否定する事は難しいだろう。
「ーーあの時はごめんね」
宏美が言う。
大きな宏美の目から、大粒の涙が流れ落ちる。
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