第一話 災いは唐突に扉をたたく

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 一戦終えて寝台の上、仰向けで横たわるロシュフォールの身体に、レティシアはうつ伏せでのりあげる形になっている。 「しなくても構いませんよ。とりあえずこちらに姫君を迎えるだけですから」  どういう意味だ?とロシュフォールが目を丸くすれば、その胸板に頬を当てていたレティシアは、顔をあげて告げた。 「マルタ・カルロス・オルテガ王女のお歳は十歳です。婚約という形はとりますが、床入りまでの時間は稼げるでしょう?」  たしかに十歳の少女に手を出す趣味はロシュフォールにはない……というより。 「俺はお前以外嫌だ」  「困りましたね」とレティシアはちっとも困っていない表情で微笑んだ。
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