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ごめん、湊。心の中で謝った。
そんな事が言えるのは、湊が親友だからだよ。
お客さんに、こんなふうに怒ったりは出来ない。
湊だから言えるんだよ。
だから、お願い、黙っていて。
消えていた想いの蓋を開けないで。
あの恋はもう終わったんだから。
*
湊と咲那さんをサロンの外まで見送った。深々とお辞儀をして顔を上げた時、二人のしっかりと繋がれた指先が見えて自然と頬が緩む。あそこには私の想いが塗られている。
今日みたいに手を繋いで、ずっとお幸せに。
そんな想いをいっぱい混ぜた。
色が消えてしまっても、想いは消えない。
幸せになってよ、親友。
サロンに戻り、受付横に置かれている紙袋に気がついた。
「これって」
「ああ、さっきの旦那さんからの差し入れ。
皆さんでどうぞって」
中を覗いてまた頬が緩む。
カラフルなネイルカラーみたいな包装の、
私の大好きな輸入菓子がたくさん入っていた。
終
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