軽くない。

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「もう帰って」 耐えきれず広げたネイル道具をササっと片付け始めた私を湊はそれでも見てくるから背を向けて片づける。 「美優」 「何?」 「ありがとう」 「うん」 目を合わせずに会話する私に湊はまたな、と静かに言うと出て行った。扉がパタンと閉まったのを確認して、階段を降りて行く音が消えた時、私は堪えていた涙をぽたりとネイル道具の上に落とした。 もう、湊は咲那さんの彼氏だ。 明日、あの夏色した指先で咲那さんとドライブに行って、浜辺の綺麗なところに車を停めて、手を繋いで海を見る。夕暮れだったら、キスとかしちゃうかもしれない。そんなシーンを想像できるくらいに、咲那さんの事は湊から事細かに聞きすぎてしまっている。
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