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向かい合って、神妙な顔の湊の爪に、あの日と同じようにまず爪のケアをしてから慎重に色をのせていく。青紫にゴールドの曲線を入れたネイルカラー。夜が明けて朝になる瞬間をイメージした門出の色。
「なぁ、美優」
「ん?」
「今、話しかけてもいい?」
「うん」
「あの日、何で、泣いたの?」
ハッとして顔を上げたら、バッチリと目が合った。
あの時抱いていた想いが全部込み上げて、目の縁が熱く緩むから、ぱっと目を逸らした。
「煩い、黙って。集中してる」
「…ごめん」
つい出た怒りも、湊の謝り方もあの日と似ていた。
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