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見せたいんだ。
「お前、それ何してんの?」
「何って、ネイル」
素っ頓狂な声が聞こえて、眠りから覚めた。
高校一年の夏の初めの月曜日。
一気に二人辞めてしまったおかげで忙しくなってしまったコンビニバイトの翌日で疲れ果て、眠っていた私は声のする方に教室の机に突っ伏したままだった顔をくるりと向けた。幼馴染の湊がクラスメイトの男子達に囲まれている。
「お前、男なのにネイルとか、マジ?
ウケでやってる?」
湊は何て返すのだろう、と内心、ドキドキした。
「いや。黒、かっけーなと思ってやった」
「いや、ないって。ネイルとか女子か、お前」
明らかに棘のある言葉を投げつけられ根岸に軽く肩をどつかれた湊は何も言わずに片手を開き、五つの爪先を見つめている。
長めの黒髪で睫毛が長くて中性的な顔立ちで、女子に対しては無口で、カッコいいけど無愛想だよねと噂されがちな横顔は明らかに答えに窮していた。
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