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「じゃ、海っぽい色にする?」
どこか海っぽいイメージの咲那さんの隣に合うようにと、私は指先を深い海の色をしたブルーのネイルカラーの容器の上で止めた。そんな私の指先には恋愛に効くって言われるゴールドのラメ入りピンクのジェルネイルが塗られている。昨日、湊からネイルして欲しいってメールが来たから急いで塗り直した色だ。ピンクは恋愛成就に効く色なんだ。
そんな私の胸の内も知らないで、これとかもいいな、と別のネイルカラーを指してくる無邪気な指先を引っ掻いてしまいたい。でも、出来ない。そんなのプロになりたい子のすることじゃない。
そんな事をしたら、恋愛相談はおろか、こうしてお互いの部屋を行き来してネイルをしてあげる事さえ出来なくなっちゃうかもしれない。
「濃いめのブルーに白いラインを効かせて夏の雲をイメージした感じはどう?明日から七月だし夏らしくさ」
「いいね、よろしく」
そう言ってまた無邪気に笑う湊。
女子で私だけには無口じゃないし、心を許してくるから勘違いしてしまいそうになる。でも今、私と前髪が一瞬だけ触れた事なんて、湊には意識の外なんだ。
意識してるのはずっと私だけ。ばかみたいだ。
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